農工大の樹 その15 |
サンゴジュ
(スイカズラ科ガマズミ属の種,学名:Viburnum odoratissimum Ker.,漢字:珊瑚樹)
この木は高さ6〜9mになる常緑広葉樹で,温暖な沿岸地域に自生します。我が国の千葉県以西と,朝鮮南部,台湾,中国の南部(湖北省,福建省,広東省)に分布しています。短い枝を地表近くから多く出し,枝には光沢のある大きな厚い葉をたくさんつけます。初夏に白い花を,秋には真っ赤な実をつけ,常緑樹ながら四季の変化を感じさせてくれる木でもあります。和名のサンゴジュは赤くなる果実の色を珊瑚にみたてて名付けられたものと言われます。太い幹にはならないため,材の利用はほとんどありません。しかし,土地を選ばずに生育し,密につく枝葉が潮風や塩水に強いことから,海岸近くでは屋敷の防風林樹種として植栽されています。
東海地方では「火伏せの木」と呼ぶ防火樹として古くから生け垣に植えられてきました。これはこの木が年間を通して葉をつけ,厚い葉が燃えにくいことを古人が経験的に知っていたことによります。このように大きな公益的機能を持つ樹木ですが,サンゴジュハムシの食害を受けると葉はまさに虫食い状態になり,不規則な食い跡は醜い傷葉になります。このことが嫌われるのでしょうか,この木の街路樹への植栽は今−つのようです。
(農学部教授 福嶋 司)