農工大の樹 その14 |
クスノキ
(クスノキ科クスノキ属の種,学名:Cinnamomum camphora Presl.,漢字:樟樹(楠木は日本でのあて字))
この種は樹高55m,胸高直径8mにもなる長寿な常緑広葉高木です。自然の分布域は広く,本州(日本海側の兵庫県以西,太平洋側の茨城県以西),四国,九州,琉球,済州島,台湾,中国中南部,ヴェトナムの暖温帯から亜熱帯に生育しています。NHKの大河ドラマ「毛利元就」の最初のシーンに出てくる厳島神社の朱塗りの大鳥居はこのクスノキで作られています。しかし,前回の造営時,日本にはもうそれを作るだけ大きな材がなかったため,現存のものは台湾から運んだものだそうです。
材は硬く,芳香があり,強い耐腐力があります。このため用途は広く,建築材,器具材,楽器材,船舶材,彫刻材として古くから使われてきました。忘れてはならないのはこの木から採る樟脳(Camphor)です。昔は日本と台湾がその主な輸出国でした。合成が可能な現在では考えられないことですが,この資源を重要視した時の政府は専売法を作り,この木を樟脳製造以外の目的で伐採することを禁止しました。
この木は病虫害に強く,育てやすいので公園樹や街路樹として盛んに植栽されています。しかし,揮発成分を多く含むことから燃えやすく,火に対しては弱い樹種で,大規模火災時の防火樹としての効果はあまり期待できそうにありません。
(農学部教授 福嶋 司)