農工大の樹 その13 |
モミジバスズカケノキ
(スズカケノキ科プラタナス属の雑種,学名:Platanus×hispanica
Miller ex Munchhausen,
別名:カエデバスズカケノキ,プラタナス,漢字:紅葉葉鈴懸木)
このプラタナスの仲間は,樹高30〜35mにもなる落葉広葉高木で,2種と1雑種からなっています。街路樹や公園になじみ深い樹種ですが,新宿御苑や小石川植物園を除くとなかなか大木は見られません。明治初期に導入されたこの仲間は,一般にプラタナスあるいはスズカケノキと呼ばれています。プラタナスは学名の属の名称ですし,スズカケノキは球状に集まった花(球状花)とその実(集合果)が一本の柄につながり,山伏が首にかけた篠懸(すずかけ)に似ていることからきたものです。
工学部の中庭で撮られたこの写真はモミジバスズカケノキで,ヨーロッパ南東部からヒマラヤに分布するスズカケノキ(特徴:集合果は3〜5個,葉は深く切れ込み,樹皮はまだらに剥がれる)と,北米東部に分布するアメリカスズカケノキ(集合果は1個,葉は浅く切れ込み,樹皮は剥がれない)を親としてイギリスで誕生した雑種です。これは2〜3個の集合果,葉は中間の切れ込み,樹皮は剥がれて褐色,灰色,乳黄色のまだらになるといった両親の中間の性質を持っています。この雑種は,両親よりもはるかにたくましく,乾燥にも強いといわれます。これが広く街路樹として植栽されるようになったのはこのためで,親の出る幕はすっかりなくなってしまいました。親もそれぞれ個性ある美しい姿をしているのに,ちょっと寂しい思いがします。
(農学部教授 福嶋 司)