農工大の樹 その12 |
モウソウチク
(イネ科マダケ属の種,学名:phyllostachys heterocyela Mitf.
,漢字:孟宋竹)
竹は樹木なのでしょうか,草なのでしょうか? 1年で成体になり,中空で節のある茎を持っこと,2年目からは伸長成長も肥大成長もしないことはイネと同じ草の性質です。しかし,地上部が木質化し,1年で枯れないことは樹木の性質といえます。つまり,草と樹木のどちらにも属さない中間の性質をもつものが竹類なのです。孟宋竹は中国原産の種で,260年はど前の天文元年(1736年)に琉球から薩摩藩に伝わったとされています。この種は高さ12m,竹の幹(桿と呼びます)の直径は20cm以上にもなる大型の竹です。筍は食用,桿はさまざまな用材として重宝され,屋敷の周りに植えられました。また,根が地下を縦横に這うため崩壊防止効果も注目され,斜面にも積極的に植栽されてきました。その利用価値の高さから,渡来以来の分布拡大は急で,現在は北海道の函飽以南の我が国全域に広く植栽されています。和名のモウソウチクには「孟宋竹」の漢字が充てられていますが,それは中国での呼び名ではなく,病の母親のために真冬に竹林で筍を探した親孝行な息子,「孟宋」の名に由来するものです。私たちが知る竹類の中で,これに類似するものとしてマダケとハチクがありますが,モウソウチクは節の環が1個,それらは2個あることで容易に区別できます。
(農学部教授 福嶋 司)