農工大の樹 その3 |
コブシ
(モクレン科の種,学名:Magnolia Kobus DC.,別名:ヤマアララギ,漢字:辛夷)
コブシは樹高10m前後の落葉高木で,わが国の全域と朝鮮南部に分布します。この名は「つぼみ」が拳(こぶし)の形であることに由来すると言われます。「北国の春」を代表する種で,まだ,雪の残る早春に他の花に先駆けて直径10cm前後の6弁の白い花を咲かせます。灰色の幹,広倒卵形の葉,花のすべてにモクレン科特有の香気をもっています。材としての利用はありませんが,古くから「つぼみ」は頭痛,鼻疾の薬として用いられてきました。また,最近では袋果の中にある赤い果実を焼酎に漬け,淡い赤色の果実酒を楽しむ人も多いようです。
この種は学内の各所にあり,サクラに先駆けて春の訪れを告げてくれますが,ここに掲載された写真は府中市の名木百選に選ばれた一般教育部の講義棟の南に生育するものです。直径40〜50cmの幹5本が群生し,太い枝を四方に広げた姿は壮観で,寒さの中に新しく出発する若人の門出を讃え,励ましているかに見えます。
(農学部教授 福嶋 司)