有機分子の異性化反応の研究

 中田研究室では、マトリックス単離赤外分光法を用いて有機分子の異性化について調べています。

ここでは一例として、アセチルアセトンの光異性化反応の研究を紹介します。

アセチルアセトンは様々な異性体構造をとることが可能だと考えられます。


 アセチルアセトンの赤外吸収スペクトルを測定し、密度汎関数法計算で予想されるスペクトルと比較することによって、その構造を調べました。


     図1 マトリックス単離されたアセチルアセトンの赤外吸収スペクトル
      黒:紫外光(λ>280nm)照射後から照射前のスペクトルを引き算
      青:密度汎関数法計算によって予測されたCCC構造のスペクトル
      桃:密度汎関数法計算によって予測されたCTC構造のスペクトル
      緑:密度汎関数法計算によって予測されたTCT構造のスペクトル

 黒のスペクトルで下向きはUV照射前の最安定な構造のバンドであり,上向きはUVによって生成した構造のバンドです。
 下向きのバンドが青のスペクトルとほぼ一致することから,最安定の構造はCCCであることがわかりました。
また,UV照射時間と異性体バンド強度の増加速度の関係を調べると,二種類の異性体が存在する事がわかりました。
計算によって予測されたスペクトルと比較することにより,CTCとTCTが異性体構造であることがわかりました。

(永島)

詳しくは下記の文献を参照してください。
 1., N. Nagashima, S. Kudoh, M. Takayanagi, M. Nakata, J. Phys. Chem., 105, 10832-10838 (2001).