材料力学U シラバス
概 要
材料力学は,様々な機械構造物の変形や強さを定量的に扱おうとする学問であり,機械構造物を設計するためには,欠くことができない基礎的な知識を学ぶ.
材料力学Uでは,まずはりの曲げの問題を材料力学Tに引き続きより詳しく取り上げる.さらに,1次元の応力状態についてのみ材料力学Tでは取り扱っていたが,ここでは複雑な応力状態での変形についても学び,様々な荷重を受ける材料のふるまいについての基礎を身につける.目標は以下の二点である.
1)基本的なはりの問題(強度と剛性)がすべて解けるようになること.
2)多軸応力状態の基礎知識を身に付け,主応力の概念を理解して,
材料の破損法則を利用できるようになること.
この授業で得た知識は,弾塑性力学,塑性工学,材料強度学,固体力学,計算力学等を学ぶ基礎となる.
授業の予定
- はりに生じる曲げ応力とたわみ
材料力学T,材力・機力演習で学んだ内容,特にはりの曲げについて復習する.以下のキーワードについて,理解できているだろうか? [教科書3,4,5章]
- せん断力図(SFD),曲げモーメント図(BMD) ,危険断面
- 曲げ応力,断面2次モーメント,断面係数
- たわみ曲線,たわみの基礎微分方程式 ,重ね合せの原理
- はりのたわみ
はりのたわみは,たわみの基礎微分方程式を解くことによって求めることができるが,複数の集中荷重が加わったはりなどでは,計算が結構面倒になる.ここでは「特異関数」を用いて簡単に解く方法について説明する.[特異関数については教科書には説明が無いので注意すること]
- はりの不静定問題
力の釣り合い式(+モーメントの釣り合い式)だけで応力を求めることができる問題を静定問題(材力Tで扱ったはりは全て静定),そうでない問題を「不静定問題」という.不静定問題の解法について説明し,幾つかの例題を解く.[教科書6章]
- ひずみエネルギとその利用
ここでいったん,はりの問題から離れて「ひずみエネルギ」について学ぶ.
弾性体では,外力のなした仕事はひずみエネルギとして物体に蓄えられる.ひずみエネルギの求め方を説明し,ひずみエネルギを用いた衝撃問題の簡易解法について学ぶ. [教科書10章]
- カスティリィアーノ定理によるはりの解法
はりの基礎微分方程式を直接解く代わりに,「エネルギ原理」に基づいてある点のたわみを求めることが出来る.その方法(「カスティリアーノの定理」)について学ぶ.カスティリィアーノの定理は,物体に蓄えられたひずみエネルギを外力で偏微分すると,外力の作用点のおける変位が求められるというものである.カスティリィアーノの定理を用いてはりのたわみを求める方法を説明する. [教科書10章]
- 曲がりはり
これまで学んだはりは,すべてその軸線が直線であった(真直はり).ここでは軸線が曲線である「曲がりはり」の簡単な場合について学ぶ.はりの長さに比べて断面寸法が小さい曲がりはりのたわみを,カスティリアーノの定理を用いて求める. [曲がりはりの説明は教科書には無いので注意すること]
- 中間試験
- 長柱の座屈
細長い柱状の物体に軸方向の圧縮荷重が加わるとき,急激に大きなたわみが生じる現象を「座屈」という.座屈の基礎式を導き,Eulerの座屈荷重について学ぶ.
[教科書9章]
- 多軸応力状態(組合せ応力下)の応力
実際の部材では,複雑な荷重が加わり,一種類の応力のみが働くことはまれである.2次元,3次元での一般的な応力状態(「多軸応力状態」)について説明し,「 応力のつり合い」,「Cauchyの関係」について学ぶ. [教科書8章]
- 主応力
多軸応力状態にある構造物の強度の評価をするには,「主応力」や「最大せん断応力」がしばしば用いられる.これらの概念を説明し,主応力と「主応力方向」を求める方法として 「モールの応力円」について説明する.また主応力が応力の「固有値」であることなどについても説明する.[教科書8章]
- 多軸応力状態での応力とひずみの関係
多軸応力状態におけるひずみの定義,「ひずみと変位の関係」や,「多軸応力下でのHooke則」について学ぶ.また主応力に対応した「主ひずみ」について説明する.さらに2次元弾性問題の基礎として,「平面応力」「平面ひずみ」の概念について学ぶ.[教科書8章]
- 材料破損(破壊)の法則
多軸応力状態の下でどのような条件のもとで材料の破壊が始まるかを表現する「破壊法則」について説明する.「最大主応力説」「最大せん断応力説」「せん断ひずみエネルギ説」などについて述べる.[教科書には説明されていないので注意]
- 様々な例題(1)
多軸応力状態の例として,
- 曲げと引張りが加わる軸
- 曲げねじりが加わる軸
について説明する.
- 様々な例題(2)
多軸応力状態の例として
- 内圧を受ける薄肉円筒
- 内外圧を受ける厚肉円筒
について説明する.
- 期末試験
履修条件・関連科目
微分・積分,物理(力学)の知識を必要とする.
材料力学Tを履修していないと,内容の理解が難しいであろう.
テキスト・教科書
『初めての材料力学』 有光隆 技術評論社
材料力学Iで使用した教科書である.
参考書
材料力学の参考書は多数有るので,自分にあったものを見つけること.
例えば 『要点がわかる材料力学』 村瀬,杉浦,和田 コロナ社 など
成績評価の方法
中間試験,期末試験 ,レポートを合計して評価する.