材料力学:講義のページ  東京農工大学 機械システム工学科 長岐研究室 2010年度版 

有限要素法 シラバス

概 要

 弾性力学や塑性力学などの固体の力学の問題に限らず,熱や流体の流れ,電磁場の状態などの物理現象は数学的には偏微分方程式によって記述されることを3年までの様々な講義で学んだであろう.有限要素法は,コンピュータを用いてこのような偏微分方程式を近似的に解き,数値解を得るための有力な手段であり,本講義では有限要素法の基礎について学ぶ.
 最近のコンピュータの進歩には目覚ましいものがあり,一昔前の大型汎用コンピュータの能力に劣らないパソコンを個人が自由に使える時代になっている.有限要素法もパソコンでも十分利用できるようになり,以前は研究や開発部門でしか使われることのなかった有限要素法が,現在ではCAEの中核技術として一般の技術者にとってもますます身近で重要な手法となっている.実際,幾つもの著名な汎用有限要素法プログラムがPC上で利用でき,その計算の手法や内容は知らなくともデータの入出力の方法さえ理解すれば,ブラックボックスとして簡単に誰にでも利用できるようになっている.
 しかし,誰にでも有限要素法が利用できるようになったといっても,例えば固体力学の問題については,力学の基礎知識無しには,計算対象を適切にモデル化して入力したり,得られた計算結果の妥当性を検討することはできない.コンピュータが山のように掃き出す計算結果の数値やグラフから意味のある情報を取り出すためには,やはり固体の力学の知識を持った技術者が必要とされる.有限要素法だけを取り出して学ぶことは,機械技術者にとってはあまり意味がない.本講義では固体力学(弾性力学)の基礎を復習しながら,有限要素法についてコンピュータによる実習を交えて,勉強していく.

授業の予定

  1. 有限要素法概要
     実際に有限要素法(Finite Element Method)が使用されている具体例を幾つか示し,有限要素法の概要を説明する.講義の日程,実習のやり方についても説明する.

  2. 固体の力学の基礎方程式:復習
     材料力学の簡単な例題を通して,固体の力学(弾性力学)の基礎方程式を復習する.また「仮想仕事の原理」とそれを用いた近似解法について簡単に説明し,そのイメージを把握する.

  3. Java プログラミング入門(1)
     プログラミング言語 Java を用いて簡単なプログラムを作成する. 本講義で用いる有限要素法プログラムはすべてJavaで作成されており,Java 言語について簡単に学ぶ.

  4. Java プログラミング入門(2)
     前回に引き続き,Java のプログラミングの実習を行う.
     (レポート提出)

  5. 弾性問題の1次元有限要素法
     有限要素法の仕組みを具体的に学ぶために,先に取り上げた材料力学の例題を1次元の有限要素法を用いて解くための基礎的事項である「要素分割」「剛性方程式」などの概念を説明する.またFEMプログラムを作成するために必要な事項について説明する.

  6. 実習:弾性問題の1次元有限要素法(1)
     実際に1次元有限要素法プログラムを利用して,簡単な問題を解き,材料力学の解と比較検討する.

  7. 実習:弾性問題の1次元有限要素法(2)
     前回に引き続き,1次元有限要素法プログラムを作成し,幾つかの例題を解く.
     (レポート提出)

  8. 2次元弾性問題の復習
     2次元弾性問題の基礎方程式を復習する.また2次元問題での「仮想仕事の原理」を導く.

  9. 2次元弾性問題の有限要素法
     「三角形要素」を用いた2次元弾性問題の有限要素法の定式化について説明する.

  10. 2次元弾性問題有限要素法プログラムの使用法
     2次元弾性有限要素法プログラムを用いて,実際に有限要素解析を行ってみる.使用するプログラムの入出力の方法について説明し,幾つかの例題を解いてみる.

  11. はりの曲げを有限要素法で解く(1)
     幾つかのはりの曲げの問題を有限要素法で解き,材料力学の解と比較する.

  12. はりの曲げを有限要素法で解く(2)
     (レポート提出)

  13. 応力集中と強度評価(1)
     切り欠きのある平板など応力集中が生じる場合について,有限要素法を用いて応力集中係数などを求め,解析解と比較する.またミーゼス,トレスカなどの条件を用いて強度評価を行う.

  14. 応力集中と強度評価(2)
     前回に引き続き,応力集中問題を有限要素法によって解く.

  15. 応力集中と強度評価(3)
     前回に引き続き,応力集中問題を有限要素法によって解く.
       (レポート提出)

履修条件・関連科目

微分・積分,物理(力学)の知識を必要とする.
材料力学T,IIを履修していないと,内容の理解が難しいであろう.

この授業で得た知識は,固体力学,計算力学等を学ぶ基礎となる.

テキスト・教科書

『はじめての有限要素法』 長岐 コロナ社

参考書

有限要素法の参考書は多数有るので,自分にあったものを見つけること.
例えば 『弾性力学と有限要素法』 田中・長岐・井上 大河出版 など

成績評価の方法

出席状況,レポートを合計して評価する.

キーワード

有限要素,FEM,エネルギ原理,剛性方程式

オフィスアワー

毎週火曜日12:00-13:00,場所:9号館303室

 

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