第33回富山中部高等学校コーラスコンサート

ミュージカル (原)台本

ナレーター これは、ある王国内で起こった出来事です。
父     よし、今日もちゃんと鍵がしまっている。
      盗人が背後から忍び寄り、エーテルを嗅がせる。
父     うっ。(倒れる。)
盗人    おい、うまくいったぞ。急げ。
金庫破り  おー。
    *「運がよけりゃ」を歌う
      金庫破りが扉の前に行き、金庫破りをする。盗人は忙しなく歩き回り、オカマはたばこをくゆらせる。
盗人    早くせーよ。
金庫破り  お前、できんがやから黙って見とれ。
金庫破り  よっしゃ、一丁上がりっ。
盗人    うほほーい。
      二人で運びだし、逃げようとする。オカマは悠然と座っている。
      二人とオカマが見つめ合う。
オカマ   そんなにきれい?
二人    逃げるんだよ!
      オカマを先頭にして一目散に逃げる。オカマが転ぶ。二人がそれを踏んづけて走る。二人は振り返って、
二人    おい、立てよ。早く逃げよう。
オカマ   こ、これが愛なのね。
二人    馬鹿言うんじゃねー。(オカマをぼこぼこに蹴る。)
オカマ   こ、これも愛なのね。
      二人は逃げる。オカマも後について逃げる。だいぶん走ってから、
金庫破り  ここまで来れば大丈夫だぜ。
      三人は腰を落ち着かせる。
盗人    意外とすんなりいったな。
金庫破り  俺様の腕のお陰だぜ。
オカマ   何よ、十分のところ三十分もかかっといて。
金庫破り  計ってたのね。
盗人    まあ、成功したんだ。とことん飲もうぜ。
    *「One」を歌う
ナレーター 莫大な金を手にした三人。その一方では、
父     (頭を抱えて)す、すまぬ。我が家の財産のほとんどが一夜にして盗賊に盗まれてしまった。
娘     お父さま…。
父     せっかく今度の誕生日には、お前の好きな熊の縫いぐるみを買ってやるつもりだったのに。
娘     いいえ、私が欲しかったのは、クルクル回るあめですわ。
父     おお、それなら、わしが持っている。(といって、なめる)
娘     ああ。(嘆き)
父     わしはこの家を売り払い、もう一度やり直すつもりだ。お前はお城に行って働いてくれないか。
娘     分かりました。少しでも仕送りしますわ。
ナレーター 何と不幸な家でしょうか。この娘はお城で働くことになりました。

女中1   何をのろのろしてるのよ。
娘     すみません、慣れないもので。
女中2   慣れないんなら来なけりゃいいの。
女中1   女王様じゃあるまいし。
女中2   今日の舞踏会を見たいから早くすませたいのよ。(時計を見て)もう時間がないじゃないの。あんた、残りの仕事を全部やっておくのよ。さ、行くわよ。 
      女中たちは戸をしめて舞踏会に行き、娘一人が残される。
      戸がスライドして、舞踏会の会場がメインに来る。娘は戸の隙間から覗く。
王子    本日は、舞踏会におこしいただき誠にありがとうございます。
      思う存分に踊り明かしましょう。
    *「おどりあかそう」を歌う
      再び、舞踏会の場面。前の曲が終わって、
ナレーター 続きましては、踊りのための音楽としてはあまりに有名な團伊玖磨作曲のこの曲です。
      少し、間があってから、「ラジオ体操第2」がかかる。
      皆がこける。
      戸から覗いていた娘もその拍子に戸か開いて舞踏会場に身を乗り出してしまう。王子はそれに目をとめて、
王子    何と美しい人だ。ああ、貴方に一目惚れをしてしまった。貴方はこの世の何物にも…
      と言っている間に王がやってきて、
王     おい、何だラジオ体操とは。去年と同じネタでお客さまに示しがつくと思っているのか。で、何を騒いでいるのだ、一体。
王子    あの、この子に一目惚れを…
王     一目惚れ? お前にはちゃんと許婚がおるだろうが。
許婚    そうですわ、私が許婚でございますわ。この小娘に一目惚れですって。ちゃんちゃらおかしくてへそが茶をわかしますわ。(高らかに笑う。)そもそも、この類まれなる美貌と教養を兼ね備えた私に勝る女がどこにいましょうか、いやいるはずがございませんわ。だって、私は、世界の、いや宇宙の    でございますもの。では、王子、部屋で待ってますわよ。
     (と言って先に去る。)
王     とにかく、財産のこともあるんだ。絶対にゆるさんからな。
王子    そ、そんな。
王     今後このようなことがないよう、この娘は息子の目に入るところで働かせぬように、分かったな。
女中たち  は、かしこまりました。
      皆が去る。王子だけ残って、
王子    ああ、一度見たあの顔が忘れられない。できることならば、あの子と一緒になりたい。毎日許婚におべっかを使わなければならないのも大変だけれど、それはまだ耐えられる。しかし、あの子の顔を思い出すと、会いたい気持ちにもう耐えられない。叶わないとは十分に心得ているつもりでも、もう思いとどまることができない。ああ。
     *「あの子が忘れられない」を歌う

ナレーター 一方、娘の方は、
女中1   何をのろのろしてるのよ。
娘     すみません、慣れないもので。
女中2   あんた、前もそういっていたでしょう。いい加減にしなさいよ。
女中1   王子さまにちょっと目をかけられたんで、いい気になってるんじゃないの。身分が違うわよ、身分が。
女中2   そうよ、ちょっと顔がいいからって人生そんなに甘くないんだからね。所詮あんたは貧しい小娘。いくら待っても白馬に乗った王子さまは来てくれない。
女中1   とにかく、あんたは新入りなんだから、もっとしっかり働きなさい。私たちは出掛けるから、部屋の掃除に整理整頓、庭の手入れと花の水やり、洗濯してほして取り込むの、あと忘れてはならないのが、ペットのゴキブリのゴキちゃんに特製団子、誤ってホウ酸入りのをやったらただじゃおかないからね。それだけを時間までにしておくのよ。
      女中たちが去る。娘はあくせくと働く。
ナレーター そうして娘は、王子とは会えず、女中にはいじめられ続けていました。
      そんなある夜のこと。
三人    隠れて様子をうかがう。
ナレーター どうやら前の盗人たち、今度は大胆にもお城に忍び込もうとしているようです。
盗人    よっしゃ、行くか。
金庫破り  待て女中だ。
オカマ   えー!
金庫破り  黙れよ。きょろきょろしてるだろう。
女中1   (きょろきょろしながら)すっかり遅くなってしまったわ。ちゃんとゴキちゃんに特製団子やってあるわよねー。
女中2   それはいいけど、ちゃんとしてないと、私たちまで叱られるんだから。しっかりやってあるわよねー。(といって、通り過ぎる。)
金庫破り  今度こそ大丈夫だ。よし、行くぞ。
      金庫破りが扉の前に行き、金庫破りをする。盗人は忙しなく歩き回り、オカマはたばこをくゆらせる。
盗人    早くせーよ。
金庫破り  お前、できんがやから黙って見とれ。
盗人    いつもそれやねか。
      少しかかって、
金庫破り  よっしゃ、一丁上がりっ。
盗人    うほほーい。
      扉の中に入り、中の荷物を荷造りする。その間に、王子が歩いてきて、盗人たちが出ようとしたその時に、扉の前で会ってしまう。
王子    おい、お前たち、
      盗人たちは取り乱して、早口で、
盗人    あー、どうしよう。
金庫破り  どうしようもないだろう。
盗人    どうしようもないっていったって。
金庫破り  ならどうするんだ。
      と、言わせるだけ言わせてから、
王子    実は、頼みがあるんだ。
三人    え?
王子    私は、ある貧しい娘に恋してしまった。といっても、私は王子、許婚もいるのでこのままでは叶わぬままに終わってしまう。そこで、一つ頼みたい。私の身代わりになってくれ。そうだ君がいい。(といってオカマの肩を叩き)ぜひとも身代わりになってくれないか。財産も私たちが暮らしていける分を除いては全部あげるから。お願いだ。
オカマ   は、はい。
金庫破り  あいつ、オカマをやめるのか。許婚って女だろう。
盗人    分かってないなー。思うに、多分、王子に一目惚れでもしてしまったんだろう。
金庫破り  まいっか、それで逃げられるんなら。
王子    では、君は私の部屋までついてきなさい。後の二人は、二度と、こんな事をしないように、もっとも私とはもう関係のないことだろうが。
      盗人二人は一目散に逃げる。王子とオカマも舞台から去る。
ナレーター そのとき、あの娘はというと、
娘     ああ、一度見たあの顔が忘れられません。できることならば、王子さまと一緒になりたい。毎日のいじめも苦しいけれど、それはまだ耐えられます。でも王子さまの顔を思い出すと、会いたい気持ちにもう耐えられません。叶わぬ思いとは十分に心得ているつもりなのに、もう思いとどまることができません。ああ。
    *「メモリー」を歌う
娘     あ、流れ星だ、王子さまと一緒に…、あーあ、いってしまったわ、何か良い方法がないかしら、そうだ。
      次の星が来るのを待って、来るとすぐに、
娘     止まれ、止まれ、止まれ!
      すると流れ星が止まって、
娘     うまくいったわ。ではこれで、
      王子さまと一緒になれますように。
      王子さまと一緒になれますように。
      王子さまと一緒になれますように。
      野獣が部屋に入り込んでくる。
娘     キャー!
野獣(王子)静かに。(といって変装を戻す。)
娘     まあ、王子さま。
王子    私は変装して逃げるから、多分ばれないでしょう。身代わりも立てたことですし。今すぐここから逃げだしましょう。そして一緒に暮らしましょう。
娘     ええ。
    *「美女と野獣」を歌う。

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