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◎ 令和2年度入学式及び連合農学研究科入学式中止のお知らせ
 本学では、4月7日(火)、令和2年度入学式及び、4月10日(金)、令和2年度連合農学研究科入学式を挙行予定でしたが、、新型コロナウイルスの想定外の感染拡大の状況を鑑み、学生・ご家族の健康と安全の確保及び感染拡大防止の観点から、中止いたしました。

令和2年度東京農工大学にご入学された皆さまへ

 新入生のみなさん、ご入学、誠におめでとうございます。
 本来であれば、新入生の皆さん、ご家族、大学の教職員や在学生が共に集い、入学式を盛大に開催するところですが、ご存知の通り、新型コロナウイルスによる感染拡大防止を最優先することにより、入学式は中止することとさせていただきました。このことは誠に残念なことですが、なによりもこの世界中に広がった極めて深刻な問題が1日も早く終息することを願っています。
 さて、新入生の皆さんは、東京農工大学の農学部、工学部、あるいは大学院へ入学され、今どのようなことを感じているでしょうか?学部入学生にとりましては、おそらく大学受験のための長い準備期間の努力を思い起こし、あるいは大学生活とはどの様なものだろうかと期待に胸を膨らませている人も多いかと思います。また、大学院入学生にとりましては、自分の研究のさらなる発展をめざし、大きな夢を描いている人も多いかと思います。人それぞれに、思いは異なるかもしれませんが、これから東京農工大学で過ごす皆さんの学生生活において、それぞれ大きな目標をたててもらいたいと思っています。
 東京農工大学は農学部と工学部からなる日本でただ一つの国立大学です。農学とは、未来に向かって自然と人のつながりを探求する分野、工学はテクノロジーによって人の生活がより豊かになる新しい世界を生みだす分野ともいえます。私は、農学と工学の結集によって、次の時代を築く様々な知恵が世の中に広められるものと確信しています。
 人類の歴史は数百万年と言われ、狩猟社会から農耕社会へと変遷を遂げ始めたのは、わずかに1万年前程です。その後、高度な工業社会、情報社会を経て現在に至るまで、我々は数多くの自然の脅威を克服してきました。たとえば、伝染病との戦いや食料の確保など、生きていけるかどうかと言う命に関わる多くの問題について、人類は自然の仕組みを学び、知恵を集積してそれを乗り越えてきました。それでは今の世の中を見ると、それは皆さんにはどのように映るでしょうか?確かに多くの問題を乗り越え、我々の生活はより高いレベルになったといえる部分もありますが、人類はまだ自然の仕組みのほんの一部しか理解していませんし、さらには急速に拡大し続ける人間活動による多大な影響が自然界や自然現象と複雑に入り交じることによって、より困難な問題が次々と発生しています。このことは、自然科学の探究に止まらず、人間の社会的な活動と自然現象との関係も深く探求し、次の来たるべき時代はどうあるべきかと言うことについてしっかりとした指針を示すリーダーの存在も必要になっています。その未来のリーダーとは皆さんのことです。そのことをしっかり胸に刻んで欲しいと思っています。
 思い起こせば農学、工学とはまさに自然界や自然現象と人との係わりを探求する中で発展してきた学問です。この領域から生まれる新たな知見が、これからの多くの問題を克服するために必須のものであることは間違いありません。今皆さんはこのような、極めて重要な役割を担う分野での学びを始めることができるのです。是非その学びを通して、自分の価値を最大化できるよう、広い視野をもった研究活動や、人と力を合わせ世の中の役に立つような大事な活動をして欲しいと思います。
 アルベルト アインシュタインは、「人の価値とは、その人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる」という言葉を残しています。皆さんも、これからは自分が何を世の中に与えることができるかを考え、そのための力をつけることを大きな目標にしてもらいたいと思っています。一言で申し上げれば、あらゆる活動において「人とかがやく」という心構えが大切なのではないでしょうか。その進め方やかがやき方はみなさんにとってそれぞれ多様なものだと思います。未知の自然現象を探求し、新しい発見を世の中に知らせることも素晴らしいことです。新しい技術でより優れたものを創り出すことや,よりよい世の中の仕組みを提案することも大切な事です。東京農工大学での学びを通して、ぜひともその様なことがしっかりできる人になっていただきたいと思っています。
 結びにあたり、新入生の耀く未来を心から期待して、私のお祝いの言葉とさせていただきます。
 ご入学、誠におめでとうございます。

東京農工大学長 千葉一裕
 
 
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