○国立大学法人東京農工大学研究動物を対象とする試験・研究等の実施に関する規程
(令和6年11月1日教規程第42号)
改正
令和7年4月1日教規程第19号
(趣旨)
第1条 この規程は、国立大学法人東京農工大学(以下「本学」という。)における研究を目的とした動物(以下「研究動物」という。)を対象とする試験・研究、治験、及び臨床試験(以下「試験・研究等」という。)に関する取扱いについて、必要な事項を定める。
(目的)
第2条 東京農工大学における研究動物(東京農工大学動物実験等に関する規程の適用を受ける実験動物を除く。)を対象とする試験・研究等の倫理等について審議することにより、研究動物を対象とした試験・研究等が、関係法令に基づいて適切に実施となることを目的とする。
(定義)
第3条 この規程において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 研究動物 家庭、ペットショップ、外部施設等で飼養、保管している又は野生の哺乳類、鳥類若しくは爬虫類に属する動物をいう。
イ 伴侶動物 家庭、ペットショップで飼養、保管している哺乳類、鳥類又は爬虫類に属する動物をいう。
ロ 展示動物 動物園、水族館、植物園、公園等の外部施設で展示や人との触れ合い等を目的として飼養、保管している哺乳類、鳥類又は爬虫類に属する動物をいう。
ハ 産業動物 外部施設等で産業に利用するために飼養、保管している哺乳類、鳥類又は爬虫類に属する動物をいう。
ニ 野生動物 自然環境のなかで生活し、人為的な飼育や繁殖がない状態で自立して 生息している哺乳類、鳥類又は爬虫類をいう。
(2) 研究動物を対象とする試験・研究 研究動物を直接の対象として、研究動物から直接取得された試料、情報の採取、収集、解析を行う試験・研究をいう。
(3) 治験 伴侶動物、展示動物、産業動物を対象として、動物用医薬品若しくは医療機器等の薬事法上の承認を得るために行われ、承認前の薬剤(医薬品候補)や医療機器等を、実際に症例へ投与または使用し、安全性と有効性(効果)を確かめるための治療を兼ねた試験をいう。
(4) 臨床試験 伴侶動物、展示動物、産業動物を対象として、新たな診断法又は治療法の開発、既存薬の効果に関する追跡調査、既存の薬が持つ別の効能に関する調査・確認など、症例に対して行う試験(前2号に該当するものを除く。)をいう。
(5) 侵襲 研究動物を対象とする試験・研究等の目的で行われる穿刺、切開、薬物投与、放射線照射、心的外傷に触れる行為等によって、研究動物の身体又は精神に障害又は負担が生じることをいう。侵襲のうち、研究動物の身体及び精神に生じる傷害及び負担が小さいものを「軽微な侵襲」という。
(6) 介入 試験・研究等の目的で、研究動物の健康に関する様々な事象に影響を与える要因(健康の保持増進につながる行動及び獣医療における傷病の予防、診断又は治療のための投薬、検査等を含む。)の有無又は程度を制御する行為(通常の診療を超える獣医療行為であって、治験等目的で実施するものを含む。)をいう。
(7) 試料 血液、体液、組織、細胞、排泄物及びこれらから抽出したDNA等、研究動物の一部であって試験・研究等に用いられるものをいう。
(8) 情報 研究動物の診断及び治療を通じて得られた疾病名、投薬内容、検査又は測定の結果等、研究動物の健康に関する情報その他の情報であって研究動物を対象とする試験・研究等に用いられるものをいう。
(9) 既存試料・情報 試料または情報のうち、次に掲げるいずれかに該当するものをいう。
イ 試験・研究等計画書(以下「計画書」という。)が作成されるまでに既に存在する試料または情報
ロ 計画書の作成以降に取得された試料または情報であって、取得の時点においては当該計画書の試験・研究等に用いられることを目的としていなかったもの
(10) 飼養者 試験・研究等のため、試料または情報及び既存試料・情報(以下「情報等」という。)を提供する当該研究動物の所有者をいう。
(11) 研究機関 試験・研究等を実施する法人、行政機関及び個人事業主をいい、試料・情報の保管、統計処理その他の研究に関する業務の一部についてのみ委託を受けて行う場合を除く。
イ 共同研究機関 計画書に基づいて試験・研究等を共同して実施する研究機関をいい、当該研究のために研究動物から新たに試料・情報を取得し、他の研究機関に提供を行う機関を含む。
ロ 治験等依頼機関 治験等を計画し、本学へその実施を依頼する研究機関をいう。
(12) 研究協力機関 研究機関以外であって、当該試験・研究等のために研究動物から新たに試料・情報を取得し、研究機関に提供のみを行う機関や研究機関以外であって試験・研究等の実施に協力する機関をいう
(13) 研究者等 試験・研究等実施責任者その他の試験・研究等の実施(試料・情報の収集・分譲を行う機関における業務の実施を含む。)に携わる関係者をいい、研究機関以外において既存試料・情報の提供のみを行う者及び委託を受けて研究に関する業務の一部に従事する者を除く。
(14) 試験・研究等実施責任者 試験・研究等の実施に携わるとともに、所属する研究機関において当該研究に係る業務を統括する者をいう。
(15) インフォームド・コンセント 飼養者が、実施又は継続されようとする試験・研究等に関して、当該試験・研究等の目的及び意義並びに方法、対象の研究動物に生じる負担、予測される結果(リスク及び利益を含む。)等について十分な説明を受け、それを理解した上で自由意思に基づいて研究者等又は既存資料・情報の提供を行う者に対し与える、当該試験・研究等(試料・情報の取扱いを含む。)を実施又は継続されることに関する同意をいう。
(16) 匿名化 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第1項に規定する個人情報の全部又は一部を削除すること(当該記述等の全部又は一部を当該個人情報と関わりのない記述等に置き換えることを含む。)をいう。
(17) 対応表 匿名化された情報から、必要な場合に飼養者を識別することができるよう、当該飼養者と匿名化の際に置き換えられた記述等とを照合することができるようにする表その他これに類するものをいう。
(18) 有害事象 実施された試験・研究等により、研究動物に生じた全ての好ましくない又は意図しない傷病若しくはその徴候(臨床検査値の異常を含む。)をいう。
(19) 重篤な有害事象 有害事象のうち、次のいずれかに該当するものをいう。
イ 死に至るもの
ロ 生命を脅かすもの
ハ 治療のための入院又は入院期間の延長が必要となるもの
ニ 永続的又は顕著な障害・機能不全に陥るもの
ホ その他上記に準ずるもの
(20) モニタリング この規程及び計画書に従って行われているかについて、治験等依頼機関が指定した者に行わせる調査をいう。(治験等が適正に行われることを確保するため、治験等の進捗状況並びに治験等が省令及び治験計画書に従って行われているかどうかについて、治験等の依頼をした者(以下「治験等依頼者」という。)が実施機関に対して行う調査又は自ら治験を実施する者 が特定の者を指定して行わせる調査をいう。)
(21) 監査 治験等の結果の信頼性を確保するため、研究動物を対象とする治験等がこの規程及び治験等計画書に従って行われたかについて、治験等依頼機関が指定した者に行わせる調査をいう。(治験等により収集された資料の信頼性を確保するため、治験等が省令及び治験計画書に従って行われたかどうかについて治験等依頼者が行う調査又は自ら治験を実施する者が特定の者を指定して行わせる調査をいう)
(学長の責務)
第4条 学長は、この規程の定めに基づき、試験・研究等に関する倫理審査委員会(以下「倫理審査委員会」という。)を設置するとともに、試験・研究等において研究動物に有害事象が生じた場合、これに対する補償、その他の必要な措置を講じなければならない。
2 学長は、治験等に関わる倫理教育の実施、治験等の飼養者への補償制度の整備、その他治験等に関する必要な措置を講じなければならない。
3 学長は、公衆衛生上の危害の発生又は拡大を防止するために緊急に研究動物を対象とする治験等を実施する必要があると判断する場合には、倫理審査委員会の審査前に実施の可否を決定することができる。
(倫理審査委員会)
第5条 倫理審査委員会は、試験・研究等の計画書がこの規程に適合しているか否かその他試験・研究等に関し必要な事項の審査を行わなければならない。
2 倫理審査委員会に関する事項は、学長が別に定める。
(研究者等の基本的責務)
第6条 研究者等は、研究動物の生命、健康及び飼養者の人権を尊重して、試験・研究等を実施しなければならない。
2 研究者等は、試験・研究等を実施するに当たっては、原則としてあらかじめインフォームド・コンセントを受けなければならない。
3 研究者等は、飼養者及びその関係者からの相談、問合せ、苦情等(以下「相談等」という。)に適切かつ迅速に対応しなければならない。
4 研究者等は、試験・研究等の実施に携わる上で知り得た情報を正当な理由なく当該研究に関与しない第三者に漏らしてはならない。試験・研究等の実施に携わらなくなった後も、同様とする。
5 研究者等は、試験・研究等に関連する情報の漏えい等、飼養者の人権を尊重する観点又は研究の実施上の観点から重大な懸念が生じた場合には、速やかに学長及び試験・研究等実施責任者に報告しなければならない。
6 研究者等は、法令等を遵守し、倫理審査委員会の審査及び学長の許可を受けた計画書に従って、適正に試験・研究等を実施しなければならない。
7 研究者等は、試験・研究等の倫理的妥当性若しくは科学的合理性を損なう事実若しくは情報又は損なうおそれのある情報を得た場合(次項に該当する場合を除く。)には、速やかに試験・研究等実施責任者に報告しなければならない。
8 研究者等は、試験・研究等の実施の適正性若しくは研究結果の信頼を損なう事実若しくは情報又は損なうおそれのある情報を得た場合には、速やかに試験・研究等実施責任者又は学長に報告しなければならない。
9 研究者等は、試験・研究等の実施に当たり、動物実験等の原則である代替法の利用(科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用することをいう。)、使用数の削減(科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限りその利用に供される動物の数を少なくすること等により研究動物を適切に利用することに配慮することをいう。)及び苦痛の軽減(科学上の利用に必要な限度において、できる限り動物に苦痛を与えない方法によってしなければならないことをいう。)の3R(Replacement, Reduction, Refinement)に基づき、適正に実施しなければならない。
(試験・研究等実施責任者の責務)
第7条 試験・研究等実施責任者は、試験・研究等の実施に先立ち、別に定める様式により、適切な計画書を作成し、学長に提出し、学長の許可を求めなければならない。計画書を変更する場合も同様とする。
2 試験・研究等実施責任者は、試験・研究等の倫理的妥当性及び科学的合理性が確保されるよう、計画書を作成しなければならない。また、計画書の作成に当たって、研究動物への負担並びに予測されるリスク及び利益を総合的に評価するとともに、負担及びリスクを最小化する対策を講じなければならない。
3 試験・研究等実施責任者は、試験・研究等の概要その他の研究に関する情報を適切に記録するとともに、試験・研究等の結果については、これを公表しなければならない。
4 試験・研究等実施責任者は、計画書に従って試験・研究等が適正に実施され、その結果の信頼性が確保されるよう、当該試験・研究等の実施に携わる研究者をはじめとする関係者を指導・管理しなければならない。
5 試験・研究等実施責任者は、試験・研究等の実施に係る必要な情報を収集するなど、試験・研究等の適正な実施及び研究結果の信頼性の確保に努めなければならない。
6 試験・研究等実施責任者は、試験・研究等の倫理的妥当性若しくは科学的合理性を損なう事実若しくは情報又は損なうおそれのある情報であって試験・研究等の継続に影響を与えると考えられるものを得た場合(次項に該当する場合を除く。)には、遅滞なく、学長に対して報告し、必要に応じて、試験・研究等を停止し、若しくは中止し、又は計画書を変更しなければならない。
7 試験・研究等実施責任者は、試験・研究等の実施の適正性若しくは研究結果の信頼を損なう事実若しくは情報又は損なうおそれのある情報を得た場合には、速やかに学長に報告し、必要に応じて、試験・研究等を停止し、若しくは中止し、又は計画書を変更しなければならない。
8 試験・研究等実施責任者は、試験・研究等の実施において、当該試験・研究等により期待される利益よりも予測されるリスクが高いと判断される場合又は当該試験・研究等により十分な成果が得られた若しくは十分な成果が得られないと判断される場合には、当該試験・研究等を中止しなければならない。
9 試験・研究等実施責任者は、試験・研究等の実施において重篤な有害事象の発生を知った場合には、速やかに、必要な措置を講じなければならない。
10 試験・研究等実施責任者は、計画書の定めるところにより、試験・研究等の進捗及び試験・研究等の実施に伴う有害事象の発生状況を学長に報告しなければならない。
11 試験・研究等実施責任者は、試験・研究等を終了(中止の場合も含む。以下同じ。)したときは、学長に必要な事項について報告しなければならない。
12 試験・研究等実施責任者は、他の研究機関と共同で試験・研究等を実施する場合には、共同研究機関の試験・研究等実施責任者に対し、当該試験・研究等に関連する情報を共有しなければならない。
(研究計画の可否等の決定)
第8条 学長は、倫理審査委員会の意見を尊重し、試験・研究等の実施の許可又は不許可その他試験・研究等に関し必要な事項を決定するものとし、当該試験・研究等実施責任者へ結果通知書を交付するものとする。
2 前項の場合において、学長は、倫理審査委員会が不承認の意見を述べた試験・研究等については、その実施を許可してはならない。
(インフォームド・コンセントを受ける手続)
第9条 研究者等が試験・研究等を実施するときは、インフォームド・コンセントを受けなければならない。
2 研究者等は、飼養者に対して、目的、計画、成果の発表方法、及び予見される研究動物に生じる身体的、精神的負担や苦痛等を、説明文書により分かりやすく説明しなければならない。
(利益相反の管理)
第10条 研究者等は、試験・研究等を実施するときは、個人の収益等、当該研究に係る利益相反に関する状況について、その状況を試験・研究等実施責任者に報告し、透明性を確保するよう適切に対応しなければならない。
2 試験・研究等実施責任者は、試験・研究等であって、商業活動に関連し得る試験・研究等を実施する場合には、当該試験・研究等に係る利益相反に関する状況を把握し、計画書に記載しなければならない。
3 研究者等は、前項の規定により計画書に記載された利益相反に関する状況を、インフォームド・コンセントを受ける手続において飼養者に説明しなければならない。
(試験・研究等に係る情報等の保管)
第11条 研究者等は、試験・研究等に係る情報等及び当該情報に係る試料を正確なものにしなければならない。
2 試験・研究等実施責任者は、情報等を保管するときは、計画書に記載した方法を基づき、研究者等が情報等を正確なものにするよう指導・管理し、情報等の漏えい、混交、盗難、紛失等が起こらないよう必要な管理を行わなければならない。
3 試験・研究等実施責任者は、情報等について、別に定める期間、適切に保管しなければならない。また、匿名化された情報について、対応表を保有する場合には、対応表の保管についても同様とする。
4 試験・研究等実施責任者は、情報等を廃棄する場合には、特定の個人を識別することができないようにするための適切な措置を講じなければならない。
(モニタリング及び監査)
第12条 試験・研究等責任者は、研究動物を対象とする獣医学系治験等の信頼性の確保に努めなければならず、治験等依頼機関によるモニタリング及び監査を実施に協力しなければならない。
(雑則)
第13条 この規程に定めるもののほか、試験・研究等の実施に関し必要な事項は、学長が別に定める。
附 則
この規程は、令和6年11月1日から施行する。
附 則(令和7年4月1日教規程第19号)
この規程は、令和7年4月1日から施行する。