原口研究室
東京農工大学 工学部 化学物理工学科
固体量子物性工学分野
研究内容:準安定相を拓く――計算科学と合成戦略の融合による新材料探索
私たちの研究室は、量子磁性・超伝導・強相関電子物性といった最前線の機能を生み出す「未来材料」を、熱力学的な最安定相(平衡相)ではなく、速度論によって長寿命化する準安定相に狙いを定めて創製しています。近年、マテリアル・インフォマティクスの進展により、第一原理計算や機械学習を用いて「どの温度・組成でどの相が熱力学的に安定か」を事前に予測し、合成指針とする流れが一般化しつつあります。しかし、エネルギー凸包(convex hull)近傍には、最安定相との差がわずか数 kJ mol⁻¹程度の多型や競合相が数多く潜み、これらは速度論的障壁により“準安定相”として実現・保持され得ます。準安定相は、平衡相では解消されてしまう局所歪みや特異な配位環境、非自明な電子状態を凍結できるため、格子対称性・バンド構造・相互作用の様式が安定相とは本質的に異なり、量子磁性、超巨大保磁力、非従来超伝導などの想定外の量子機能が発現する「未知物性の宝庫」です。
この未踏領域を切り拓くために、私たちは低温プロセスを中核とした“反応設計”に挑戦しています。固相メタセシス反応、トポケミカル反応、水熱反応、メカノケミカル反応など、非平衡条件下で反応経路と拡散・転位を精密に制御できる合成手法を駆使し、温度・圧力・組成に加えて、副生成物の除去や化学ポテンシャルの調整といった反応場そのものを設計します。これにより、エネルギー地形に存在する浅い局所極小へ結晶を“凍結”させ、熱力学の支配する平衡相では到達できない構造を選択的に実現する新しい合成学の確立を目指します。
有機合成が多段階反応を通じて複雑分子を設計するように、私たちは無機固体において、数百万個の原子配置を反応経路から設計する「結晶合成の新しいパラダイム」を構築します。準安定相という非平衡のフロンティアを、計算と実験の統合によって系統的に探索し、物質科学の未踏領域を切り拓くことが本研究の学術的価値であり、同時に次世代の量子機能材料創製へ直結する基盤になると考えています。
固相メタセシス:固体化学の新展開
副生成物の化学ポテンシャルを制御し、未知の準安定相新物質を設計・合成。
トポケミカル反応で拓く新物質探索
イオン交換により既存物質を変換し、新たな量子磁性体や超伝導体を自在に創出。
天然鉱物を模倣した量子磁性体創製
天然鉱物の結晶構造を利用し、スピン液体やスキルミオン相など未踏量子磁性を開拓。
研究成果:出版論文
2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
研究成果:学会発表
2025
-
Development of quantum magnets based on the crystal structure of natural minerals
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Molecular Meets 2D Magnets
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粘土鉱物構造に立脚したフラストレート磁性体の開発
2024
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準安定量子磁性体の強磁場物性
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クラスターモット絶縁体における量子スピン液体再考
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低温トポケミカル反応と第一原理計算を組み合わせた量子磁性体の合成反応設計
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新しいキタエフ物質の開発
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分子性ユニットを含む量子磁性体の水熱合成
2023
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速度論的反応設計に基づくキタエフ磁性体の開発
2022
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固体化学の立場から見えてきたキタエフ磁性体の開発指針
2021
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低温合成による新しいキタエフ物質の探索
2020
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トポケミカル法を用いた新しいキタエフ磁性体の探索
実験装置
合成・雰囲気制御・構造解析・熱分析・計算まで、準安定相探索に必要な装置群を整備しています。
電子天秤
化学量論を正確に決めるための秤量装置です。
詳細
微小な誤差が相純度や再現性に直結します。
乳鉢+乳棒(瑪瑙)
原料を均一に混合・粉砕する基本ツールです。
詳細
瑪瑙製はコンタミを抑えやすく、初期条件のばらつきを減らします。
マグネット自動乳鉢
混合・粉砕を自動化し、作業者差を減らします。
詳細
均一性と再現性の向上に有効です。
粉末成形金型(超硬合金)
粉末をペレット化して固相反応を進めやすくします。
詳細
接触面積と拡散距離が反応速度を左右する系で有効です。
グローブボックス(UNICO製)
低酸素・低水分環境で試料を取り扱う装置です。
詳細
空気不安定な系の合成・保存に必須です。
真空ライン(自作)
石英カプセル封入などを真空・制御雰囲気で行います。
詳細
揮発成分や酸化を抑えた合成に使います。
ロータリーエバポレータ(ヤマト科学)
溶媒の濃縮・除去を効率よく行います。
詳細
溶液プロセスや洗浄工程の再現性に効きます。
電気炉(最高温度:約1100℃)
固相反応の標準装置。温度履歴で生成相を制御します。
詳細
焼成・アニール条件の反復探索に使用します。
ボックス炉(最高温度:1200℃)
安定した温度場で焼成・アニールを行います。
詳細
相純度と結晶性の改善に使います。
ボックス炉(最高温度:1100℃)
日常的な焼成・熱処理に使用します。
詳細
条件出しの反復を高速化します。
自作管状炉(最高温度:1050℃)
雰囲気や温度プロファイルを工夫しやすい管状炉です。
詳細
目的に応じた反応場の設計に使います。
2ゾーン炉(ヒートテック製)
温度勾配を作り、CVTなどの単結晶育成に使います。
詳細
結晶品質の向上に直結します。
二硅化モリブデン発熱体炉(〜1550℃)
高温焼成が可能で、難反応系にも対応します。
詳細
高温相・高融点系の探索に使います。
シリコニット炉(〜1450℃)
1450℃までの高温域で焼成・アニールに使います。
詳細
高温相・固溶体形成の探索に有効です。
水熱合成オートクレーブ(最高温度:約250℃)
熱水中で結晶化を進め、固相法では得にくい相を探索します。
詳細
天然鉱物類似の反応場を実験室で再現します。
恒温槽(最高温度:約250℃)
均一な温度場で加熱し、反応の再現性を支えます。
詳細
水熱反応や溶媒系の前処理に使用します。
高温対応スターラー(〜200℃)
高温下で攪拌し、濃度勾配や成長条件を制御します。
詳細
粒径・結晶品質の調整に使います。
遠心分離機(久保田商事)
結晶とフラックス(溶媒)を分離し、回収を効率化します。
詳細
単結晶回収の効率と品質保持に有効です。
遊星ボールミル(フリッチュ社)
機械的エネルギーで粉砕・反応を進めます。
詳細
メカノケミストリーや準安定相探索に使います。
粉末X線回折装置(リガク製)
相同定・結晶性評価の中核装置です。
詳細
合成条件の意思決定を高速化します。
雰囲気セパレータ(リガク製)
空気不安定試料を不活性雰囲気でXRD測定します。
詳細
変質を避けて正しい構造情報を得ます。
示差走査熱量計(DSC、島津製作所)
相転移や反応の熱効果を測定します。
詳細
生成熱発生観測や相安定性の議論に使います。
示差熱/熱重量同時分析計(TG-DTA、島津製作所)
重量変化と熱効果を同時に追跡します。
詳細
分解・脱離・酸化還元の解析に使います。
計算用ワークステーション(Lenovo)
第一原理計算で安定性・反応・電子状態を評価します。
詳細
合成結果の解釈と次候補設計に直結します。
競争的資金
- 2025.04-2028.03JSPS科研費 基盤研究(B)/代表
「副生成物拡張自由度が実現する熱力学的制約を超越した未踏新物質創製と異常物性開拓」 - 2025.04-2028.03JSPS科研費 学術変革領域研究(B)/分担
「マルチ層配列:分子層内外の電子-格子自由度制御に基づく超薄膜機能の新展開」 - 2025.04-2027.03JSPS科研費 学術変革領域研究(A) 公募研究
「結合終端エンジニアリングによる複合超セラミックス磁性ナノシートの開発と機能創出」 - 2023.10-2027.03JST さきがけ/研究代表者
「第三世代キタエフ物質」 - 2023.04-2025.03JSPS科研費 学術変革領域研究(A) 公募研究
「分子アニオン化合物を前駆体とする固相メタセシスの開拓と超セラミックス量子物質創製」 - 2022.04-2023.03池谷科学技術振興財団 単年度研究助成
「低温固相メタセシスで拓く新しいマグネシウム蓄電池正極材料」 - 2022.04-2025.03JSPS科研費 若手研究/代表
「速度論的結晶場エンジニアリングで拓く新奇スピン軌道結合量子相」 - 2019.04-2022.03JSPS科研費 若手研究/代表
「低温複分解を用いたキタエフ型磁性体のスピン軌道結合効果の制御と異常物性探索」 - 2016.04-2018.03JSPS科研費 特別研究員奨励費(DC2)/代表
「クラスター磁性体における局所電荷揺らぎを利用した新奇電子物性の創成」
イベント
2026
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- 学術変革領域研究(B)マルチ層配列
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