PM2.5問題について(環境資源科学科ホームページより)

平成251月に中国において広い地域で高濃度のPM2.5が観測され、日本でも西日本を中心にわが国の環境基準値(1日平均35 μg/m3)を越える濃度が見られたことから、越境大気汚染によるPM2.5 についての関心が急速な高まりを見せました。PM2.5とは粒径が2.5 μm以下のエアロゾル(大気中に浮遊する微細な粒子)のことですが、これに対して様々な憶測や一般市民の恐怖感を煽るようなマスコミ報道も見られ、誤解を招く原因にもなっているので、ここでも簡単に説明しておきたいと思います。

 PM2.5の環境基準が制定されたのは平成21年のことであり、PM2.5という言葉が耳新しく、また理解しがたいものであったことと、中国において極めて高い濃度が観測されたことから、非常に危険なものが発生し、健康に被害を及ぼすおそれのある物質がわが国にも高濃度で押し寄せてくるかのような錯覚にとらわれたものと思われます。しかし現在の日本においてはすぐに健康に問題を起こすようなレベルになっているわけではなく、平成25310日に煙霧と報じられたような、国内を発生源とする高濃度PM2.5も起こるのであり、いたずらに恐怖にとらわれる必要はありません。落ち着いた対応と、何よりも、中国の国民が非常に深刻な事態に直面しているのだということを思いやるべきです。

 環境資源科学科では文部科学省科学研究費補助金による「東アジアにおけるエアロゾルの植物・人間系へのインパクト」プロジェクトに多くの教員が参加し、地上観測・航空機観測による長距離輸送されたエアロゾル粒子の観測、樹木に対する微小粒子の暴露実験による影響の評価、樹木やその葉に沈着した粒子状物質の観察と解析、森林における粒子状物質の沈着プロセスの解明など、PM2.5を含む大気中の微粒子に関する研究を精力的に進めてきました(下図参照)。その成果は多くの学術論文として報告されており、また上記プロジェクトのホームページ(http://www.tuat.ac.jp/~aerosol/)においても紹介されています。またPM2.5問題についての様々な疑問点については、本学科の畠山教授や松田准教授らを中心にまとめられた日本エアロゾル学会のホームページのQ&Ahttp://www.jaast.jp/PM2_5_faq/)が参考になります。



(左)越境大気汚染観測のための観測機内の様子(畠山教授提供)、()スギの葉に吸着された硫酸アンモニウム粒子(船田教授提供)矢印が微小粒子、(右)タイに設置された粒子沈着観測タワー(松田准教授提供)