計画研究A04
エアロゾルの健康影響の解明

研究概要

目的
A04の目的は、A01・A02で得られたエアロゾルの詳細な情報を曝露情報として利用し、下図に見られるような地域汚染、越境汚染、攪乱要因という重層した影響を明らかにすることを目的とする。
概観および作業の流れ
背景
PM2.5など、エアロゾルが健康に影響を与えることは知られているものの、どの程度の濃度でどの程度の影響が起こるかに関しては、大きな地域差があることが知られており、世界的にもその解明が待たれている。
地域差の候補として、曝露の問題と、攪乱要因の問題があげられる。
まず、曝露の問題として、エアロゾルの粒径、化学的性質、金属の関与などが考えられている。その解明に、実際にアジア諸国で起こっている曝露を精密に測定するA01・A02班からの情報が有用である。しかも、越境汚染に関して、発生源から到達地点までの情報が得られるため、到達地点での影響が明らかになった場合には、直ちに発生源における対策に結びつけることができる。また、スギ花粉症は国民的な問題となっており、その発症・症状増悪にも黄砂を含む越境汚染が関与している可能性があるので、その複合曝露を解析することも重要である。
一方、攪乱要因としては、外気の曝露と室内との相違、気象など、様々なものが含まれる。まず、実験において、そういった要因を排除した形で、A01・A02からの情報をもとにした正確な曝露物質と健康との関連を探る。
ただし、動物実験は直接人間の影響を表しているとは限らないので、人間を対象とした疫学研究も重要となる。疫学では、攪乱要因を変数としてモデルに組み込むことで制御するが、今まではアジア諸国の研究が個別に行われており、影響の相違が研究ごとのモデルの相違による部分との峻別が不可能であった。本研究では、米国で行われた地域研究と同程度の統一性を持った方法でアジア諸国の解析を行うため、モデルによる相違を最小限にすることができる。また、曝露情報も、通常は法律で定められた、測定局からのデータに限られるが、本研究ではA01・A02からの詳細な情報が利用できるため、世界的に貢献できる研究となる。
さらに、本研究では越境汚染も考慮に入れた解析であることがユニークである。韓国などで一部黄砂の健康影響研究が行われているものの、十分なデータがそろっているとは言えない。本研究で、アジア地域の地域汚染と越境汚染の重層的な影響の調査、しかも曝露情報が詳細であるという点で、世界でも初めての研究である。
構成
計画研究P12では疫学的な手法、P14では実験(毒性学)的な手法を用いて関連を調査し、計画研究P15では、特に日本で問題になっているスギ花粉症に焦点を当て、その黄砂との複合影響を調査する。
詳細については、領域申請書を御参照いただきたい。