研究項目A01
エアロゾルの生成と排出源の評価

研究概要

目的と全体構成
エアロゾルの人の健康や植物への影響評価、発生源制御・抑制策の策定にあたっては、その発生源の特性と環境中での挙動に関する正確な物理・化学的知見、影響に関する生物・医学的知見、これらの知見を総合して発生源と受容体(ソース・リセプター)間の関係を定量的に評価することが不可欠である。このうち、大気中における前駆体ガスからのエアロゾル生成、すなわち二次粒子生成に関わる要因は複雑で多岐に及ぶ非線形なシステムであるために、その全貌の解明は不十分な状態にある。また、地域汚染はもとより越境汚染の解決には、発生源からの負荷と影響を個々の地域や国内の排出源に限定することなく、人為発生源を国際貿易を含む経済活動のグローバル化が誘起する経済と環境の連鎖を社会経済的視点から捉え、その隠れた排出構造を明らかにすることが必須と言える。本研究項目では、エアロゾル及びその前駆体の発生源特性、大気中での反応と二次粒子生成機構の解明に主眼をおくが、各計画研究の成果を相互に共有して新規な展開を図り、他研究項目にある異分野の成果も反映させ、発生源評価に社会経済的視点を導入することで新たな学術領域の創生を目指す。
特に、@アジアの地域特性を考慮したエアロゾル及びその前駆体の発生源特性の評価(人為起源+植物起源)と、A種々の大気環境条件下における前駆体反応機構と二次粒子生成過程の解明に重点をおく。また、ソース・リセプターの定量的関係と産業連関分析を融合することにより、B各国の人為発生源(産業部門)の経済活動に伴って自国のみならず、間接的に他国に誘発される負荷量や影響度を評価する。

班構成
班番号課題名役割氏名所属・身分
P01  多成分、非常態下における二次粒子生成・成長過程の解明  代表 奥山喜久夫 広島大学
工学研究科 教授
分担藤本敏行室蘭工業大学
准教授
分担瀬戸章文

金沢大学
自然科学研究科 准教授

分担 荻 崇 広島大学
P02エアロゾル前駆体の実時間計測による二次有機エアロゾル生成過程の解明代表廣川 淳北海道大学
地球環境科学研究院 准教授
分担猪俣 敏国立環境研究所
大気圏環境領域 主任研究員
分担高橋けんし京都大学
生存圏研究所 准教授
P03  人為発生源におけるエアロゾルの生成と排出源同定   代表 神谷秀博 東京農工大学
共生科学技術研究院 教授
分担和田匡司石川工業高等専門学校
環境都市工学科 助教
分担 並木則和  工学院大学工学部
環境エネルギー化学科 
准教授 
分担塚田まゆみ東京農工大学
共生科学技術研究院 技術職員
連携 牧野尚夫 電力中央研究所
エネルギー技術研究所 上席研究員
連携 峰島知芳 東京農工大学
工学部化学システム工学科 助教
P04  社会経済活動のグローバル化を考慮したエアロゾル排出源と影響の評価  代表 東野 達 京都大学
エネルギー科学研究科 教授
分担 大原利眞 国立環境研究所
地域環境研究センター センター長
分担谷 晃静岡県立大学
環境科学研究所 准教授
分担南齋規介国立環境研究所
循環型社会・廃棄物研究センター
主任研究員
連携山本浩平京都大学
エネルギー科学研究科 助教
連携 小南裕志 

森林総合研究所
関西支所 主任研究員 

項目班長
主な研究内容
P01
P02
BVOCの気相酸化反応とこれに続く二次有機エアロゾル生成・成長過程の解明、特に高度計化学測システムの開発による化学種、反応速度の決定を行い、定量化モデルを構築する。また、対流圏上層を想定した低温・低圧の非常態場及び、有機・無機の多成分系における二次粒子生成・成長過程の実験的解明と、これに必要なサブナノ領域からサブミクロンまでの粒子計測システムの開発を行う。さらに、前半の反応種や速度データを利用した一般動力学モデルにより二次粒子生成・成長過程を理論的に評価する。
P03
P04
東アジア地域の規制レベルに合わせた固定発生源(実験室〜パイロットプラントの石炭、バイオマス、廃棄物燃焼)における一次粒子及び二次粒子生成・排出挙動計測評価システムを確立し、生成過程の解明とソース・リセプター関係の同定のための発生源プロファイルの構築を行う。また、東アジアの環境条件における植物起源揮発性有機化合物(BVOC)フラックス計測とインベントリマップの構築を行う。
P04 P03、P04の発生源情報と化学輸送モデルを用いて東アジア地域におけるエアロゾル空間分布から地域汚染や越境汚染の状況を推定する。この結果に人や植物への影響評価を実施する他研究項目の成果を導入し、ソース・リセプター関係を定量的に評価する。さらに、人為発生源を経済部門別に分類し、ソース・リセプター関係と産業連関分析法を融合して、アジア地域における影響ポテンシャルの社会経済的構造分析を行う。