TUAT Zhang Lab

テラヘルツ周波数帯の半導体マイクロ・ナノ構造の基礎と応用

テラヘルツ(THz)/フェムト秒(fs)領域は、固体物理のみならず、物質科学、化学、薬学、バイオ、イメージングの分野で注目されていますが、従来の半導体デバイスが最も苦手とする未開拓の周波数領域として取り残されてきた。近年の量子ナノ構造やパルスレーザ技術の進展により、次第にそのギャップが埋まりつつある。
我々は、新しいテラヘルツ技術を開発し、それを用いて半導体マイクロ・ナノ構造の材料特性を解明し、更に、マイクロ・ナノ構造を採用する新しいテラヘルツデバイスの可能性を開拓することを目指しいる。

1. テラヘルツ波を利用して単一ナノ量子構造における電子ダイナミックスの評価及び制御

Posted by Ya Zhang on 2018年5月31日

 波長約100ミクロン程度のテラヘルツ(THz)電磁波の光子エネルギーや時間スケールは、半導体中の典型的なそれと整合するため、半導体中の電子状態やダイナミクスに関する貴重な情報を与えてくれる。しかし、THz電磁波の波長は約100μm程度であり、一方、量子ドットと呼ばれる量子ナノ構造のサイズは数十nmと何桁もサイズが異なるため、多数の量子ドットの平均的な情報を計測することしかできなかった。一般に自己組織化量子ドットのサイズには揺らぎがあるため、信号は非常にブロードとなり、量子ドット中の量子遷移の物理をTHz分光で精密に議論することは不可能であった。
 本研究は、ナノギャップ金属電極を用いてTHz電磁波をナノメートル領域に集光し、単一自己組織化量子ドット中のサブレベル間遷移スペクトルの精密な測定に世界で初めて成功するとともに、量子ドットの異方性や遷移選択則、電子間相互作用、軌道の電子配位などがスペクトルに与える影響を明らかにしたものであり、THz電磁波でナノメートル領域の物性を解明するという新しいナノ科学・ナノエレクトロニクスの分野の開拓に大きく貢献するものである。

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2. MEMS・NEMS構造を用いた室温動作・高感度テラへルツボロメータの開発

Posted by Ya Zhang on 2018年5月31日

環境、安全・安心、情報通信、基礎科学など広範な応用が注目されているテラヘルツ技術を広く応用するためには、室温動作する高感度・高速のテラヘルツ検出技術を開発することが非常に期待されている。特に、テラヘルツイメージング用のカメラに応用できるような集積可能な半導体非同期型検出器のニーズは極めて大きい。 光子エネルギーが非常に小さいテラヘルツ領域では、光を一旦熱に変換し、温度上昇を信号として用いるボロメータ技術が有望である。我々はGaAs両持ち梁MEMS共振器を用いた新規なMEMS温度センサを開発した。このMEMSセンサは、温度上昇を共振器の周波数のシフトとして検出し、極めて微弱な温度上昇(室温で約1μK)を検出することができ、その温度感度は従来の温度センサ(サーミスタ)より少なくとも1000倍も高い。本研究では、この新規なMEMSセンサと低い熱伝導率を有する材料の結合を通じ、室温で高感度・高速なテラヘルツボロメータを実現し、テラヘルツ周波数帯利用の産業分野の発展に寄与することを目指す。 .

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