研究内容

2004年に設立した研究室です。本研究室では、生物学と数学・物理学の境界領域として、生命現象を原子・分子レベルで解明することを目指しています。卒研究生、大学院生、博士研究員、産学連携研究員など15から20名ほどで力を合わせて、自由・活発な議論を交わしながら、論理的な考えに基づいてタンパク質の物性・構造と生物学的・生理学的機能に関する研究に日々励んでいます。
そのため、バイオインフォマティクス、生物物理学、抗体工学・タンパク質工学を用いて、タンパク質の物性や構造を解析・設計し、酵素や抗体の改変実験を行っています。


研究例−1:タンパク質の溶解性を解明、制御する

目的とするタンパク質の機能や構造を変えずに溶解性を向上させる技術を開発しています。 本技術は、溶解性が低いタンパク質に数残基の親水性のアミノ酸を遺伝子工学的に付加するという簡単な発想に基づいています。 従来の溶媒条件の調整によって目的タンパク質の溶解性を向上させる方法と比べると、以下の点で飛躍的に有利な技術です:

☆ 溶媒条件下で使用でき、溶媒調整が無用です。
☆ 分子量数千のペプチドから5万のタンパク質まで、ほとんどのタンパク質に効果が見られる汎用的な技術です。
☆ 組換えタンパク質の精製によく用いられるTEV(Tabacco Edge Virus)酵素の溶解性を向上させました。その結果、市販TEVより広条件下で使用可能なスーパーTEV酵素が出来ました。
☆ 海ほたる(ガウシア)由来の発光酵素であるルシフェラーゼの溶解性を向上させることで、大腸菌から組換えルシフェラーゼを生成することが可能になり、昆虫細胞を使用するより格段に安価で短時間に生成が出来る様になりました。
☆ Scfvという抗体断片の可溶化を進めています。

関連文献

☆ Nautiyal Kalpana and Kuroda Yutaka A SEP tag enhances the expression, solubility and yield of recombinant TEV protease without altering its activit, N Biotechnol. (2018 May 25);42:77-84.


☆ Kato A, et al, Mutational analysis of protein solubility enhancement using short peptide tags, Biopolymers, 85:12-18 (2007)

☆ 特願:2007-303780 加藤 淳ら:ペプチドの溶解度計算方法、及びそれを用いたペプチドタグの設計方法とタンパク質の合成方法




研究例−2:たんぱく質凝集の生物学的・生理学的影響

近年、蛋白質凝集が神経変性疾病以外の生理学的影響が明らかになりつつある。われわれは、無毒な蛋白質が凝集することで引きお子される免疫原性の増強を研究しています。特に、独自開発した蛋白質の溶解性を制御する手法を、蛋白質の可溶性会合体の形成に応用することで、低分子量の組換え蛋白質の免疫原性を工場させることに成功しました。現在、その技術をデング由来のペプチド・タンパク質を抗原に用いた抗デングウイルスの組換え蛋白質ワクチンへの発展の可能性を探っています。

また、最近では、抗体など蛋白質製剤が頻繁に使用されています。投与する際の蛋白質濃度は、数十mg/mLと非常高いため、蛋白質が変性や行精することもある。われわれは、創薬蛋白質のモデルとして抗体断片であるScFvを用いて、高濃度での蛋白質の物性を測ると同時に、凝集や変性した蛋白質の免疫原生と細胞毒性を調べています。





研究例−3:バイオインフォマティクス:機械学習(AI)を用いたタンパク質の溶解性及びドメインの予測

最近まで、アミロイド以外の凝集の予測やシミュレーションはあまり進められてこなかった。一方、非アミロイド凝集が生理学的な影響を有するという最近の研究から、不定形(アモルファス)凝集の形成機構をバイオインフォマティクス手法を用いて解析することが急務となっている。われわれは、分子動力学法(MD)又はブラン分子力学法(BD)や格子モデルとモンテカルロ法を使用して、蛋白質やぺぺちどの溶解性の形成を計算機内で再現できるか否かを調べている。最近では、MD−GRAPEスーパーコンピュターを使用した理化学研究所との共同研究で、アミノ酸の溶解性を再現できることを検証した。また、現在、SCfv抗体の可溶化にBDを用いて設計している。最終的には、AIを用いて蛋白質やペプチドの溶解性を配列情報から予測したいと考えている。




関連文献

☆ Yutaka Kuroda*, Atsushi Suenaga, Yuji Sato, Satoshi Kosuda & Makoto Taiji, All-atom molecular dynamics analysis of multi-peptide systems reproduces peptide solubility in line with experimental observations, Scientific Reports 6, Article number: 19479


特許第5273438号黒田裕、泉川直重、加藤 淳、惣谷志保理、:ペプチドの溶解度計算方法、及びそれを用いたペプチドタグの設計方法とタンパク質の合成方法、平成20年(2008)1月11日出願、登録日:平成25年(2013)5月24日


AIを使用する2つ目の研究テーマとして、蛋白質ドメインを配列から予測する研究を行っている。 単独で生物機能を発現できるドメイン領域は、タンパク質の重要な基本単位である。アミノ酸配列からドメイン領域を予測する方法は、タンパク質を、迅速な解析が可能なドメイン単位に分割する手法を提供することから、プロテオームの網羅的解析に必須な手法です。本研究室では、新規タンパク質のドメイン領域を、アミノ酸配列情報から高効率に同定するサポートベクターマシン(SVM;AIの一種)を開発し、インターネットで公開しています。

本予測機の的中率は60%に近く、CASP8(国際蛋白質構造予測コンテスト、2009年実施)のドメイン予測部門でも1位となったことから博士課程2年生の蝦名君が東京農工大学学生表彰を受賞しました(http: //www.tuat.ac.jp/~domserv/cgi-bin/DLP-SVM.cgi )。

   入力情報::配列                  予測 出力情報:構造情報


関連文献

☆ Richa Tambi, Shoichi Ide, Teppei Ebina, Yutaka Kuroda, Fast H-DROP: A thirty times accelerated version of H-DROP for interactive SVM-based prediction of helical domain linkers", Journal of Computer-Aided Molecular Design (2):237-244. (2017)

☆Teppei Ebina, Hiroyuki Toh, Yutaka Kuroda*, DROP: an SVM domain linker predictor trained with optimal features selected by random forest, Bioinformatics, 27(4):487-94 (2011)

☆ 黒田裕 他、タンパク質のドメインリンカーを予測する方法、特許第4213034号、特許出願人:理化学研究所

研究例−4:タンパク質の構造を原子レベルで解明し、その物性や活性を改善する


タンパク質や酵素の構造を原子レベルで解明することは、その活性や安定性を改変するための基盤情報になります。
現在我々は、海洋性プランクトンの一種であるガウシア由来の ルシフェラーゼ酵素(生物発光を触媒する酵素)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ウシ膵臓トリプシン阻害タンパク質や、院内感染病の原因となるバンコマイシン耐性遺伝子群の一つであるVanX酵素の構造解析を進めており、それらの安定性及び活性(発光活性、阻害活性、溶菌活性など)を制御・設計する技術を開発しています。


関連文献

☆ Nan Wu, Tetsuya Kamioka, Yutaka Kuroda*. A novel screening system based on VanX mediated autolysis - application to Gaussia luciferase. Biotechnol Bioeng, 113( 7), 1413-1420 (2016)

☆ Rathnayaka T,et al, Biophysical characterization of highly active recombinant Gaussia luciferase expressed in Escherichia coli. Biochim Biophys Acta. Proteins and Proteomics In press (2010)

Islam M M, et al, Crystal structure of an extensively simplified variant of bovine pancreatic trypsin inhibitor in which over one-third of the residues are alanines, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105:15334-15339 (2008)



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