東京農工大学 土壌学研究室 田中治夫 調査・研究日誌 戻る

「泥染め」に挑戦
 東京の南の八丈島には,黄色・鳶(トビ)色・黒色に染められた黄八丈という染め物があります.また,鹿児島の南の奄美大島には,烏(カラス)の濡羽(ぬれは)色といわれる艶のある黒色の大島紬があり,沖縄の久米島には黒褐色で深みのある久米島紬などがあります.これらの色がきれいな染め物は,色を染めるときに泥を使うので,泥染めと呼ばれています.
 泥の中に含まれる鉄などが,絹の繊維と植物染料の結合をさらに強くする働き(媒染といいます)を持っていて,独特な色をだしています.色は,植物染料や泥の種類よって異なります.
 実際に,泥染めをおこなって,泥の種類によって色がどの様に異なってくるかを調べてみました.

用意したもの
 布 :絹と木綿の白無地のハンカチ.絹が染まりやすくて良いが木綿でも良い.
 植物:ツバキ,チャなどの常緑広葉樹の葉.今回はツバキを使いました.
 土壌:2種類の土を用意しました.
    @農工大の水田の土(灰色低地土)
    Aガーナの赤い土
     (外国の土壌は日本に持ち込めません。研究のため特別に輸入許可申請し,
      研究後,滅菌消毒した土壌を使いました.)

染め方
1.植物を煮る.
  ツバキの葉を細かく刻んみました(写真@).
  それを火にかけ,沸騰後弱火で
1時間ぐらい煮て煮汁を作りました(写真A).
2.煮汁へ布を入れる.(染色)
  布を煮汁の中に入れて,とろ火で2030分間煮染めました(写真B).
3.泥の中に布を入れる.(媒染)
  泥へ煮汁から取り出した布を入れました(写真C).
  泥をまんべんなくつけて
2030分漬けておきました(写真D).
4.漬け終わったら十分水洗いして(写真E),乾燥させました.




完成品

左下から
 絹を水田の土で
 絹をガーナの土で
 木綿を水田の土で
         染めたハンカチ


(引用文献)
  日本土壌肥料学会土壌教育委員会編:泥染め[観察実験],
   新版土をどう教えるか -現場で役立つ環境教育教材- 上巻,p.2627

   古今書院,東京 (2009)
(参考文献)
  国立科学博物館
筑波バーチャル植物園 教育プログラム 泥で布を染めよう!
   (http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/vwdata/kyoiku/edupro/dorozome/index.htm
  日本土壌肥料学会編:土でハンカチを染めてみよう,
   土の絵本
@土とあそぼう,p. 2627,農文協,東京(2002

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