MOT 東京農工大学大学院 産業技術専攻

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在学生・修了生の声

在学生の声

在学生 鈴木 敬一さん

1)プロフィールをお聞かせください。
私は2002年に東京農工大学工学部機械システム工学科を卒業し、その後は民間企業で20年以上にわたり機械系のエンジニアとして勤務してきました。現在は、若いエンジニアの育成に携わる人材開発の業務に従事しています。

2)なぜI専攻を選択されましたか?
長年にわたりエンジニアとして業務を行ってきた中で、特許出願などの知的財産に関わる活動を経験しました。そこで、企業が保有する特許を戦略的に活用する知財戦略に強い興味を抱きました。 また、海外での業務経験を通じて、エンジニアとしての技術業務だけでなく、グローバルマーケティングや経営戦略の重要性を認識しました。異なる文化や市場でビジネスを展開するには、技術のみならず経営の視点が不可欠であることを学びました。 会社でもMOTの研修を受けましたが、それらをより体系的に学びたいという思いが強まりました。そして、私の母校である農工大がMOTを学べるI専攻を提供していることを知り、受験することを迷うことなく決断しました。

3)プロジェクト研究に向けて、ゼミでの活動を含め、現在どのような研究に取り組まれていますか?
現在私の行っている研究は、「技術経営における企業内技術士に関する研究」となります。 私自身が機械部門の技術士の資格を持っていますが、この技術士という資格が国家資格であるにもかかわらず、一般的な認知度が低いことに懸念を感じています。技術士になるためには特定の資質や能力が求められており、これらを最大限に活用することで企業経営に良い影響を与えることができると考えています。そのため、人材マネジメントや知財マネジメントの観点から、技術士をどのように活用するかについて研究を進めています。

4)I専攻に入学してから今までを振り返ってどのような感想をお持ちですか?
I専攻に入学してからの経験を振り返ると、私は非常に充実した時間を過ごしてきたと感じています。I専攻では、社会人学生と学部卒の学生が一緒に学ぶ機会があります。そのため、講義の中で他の社会人学生の方々が持つ様々な経験や視点を聞くことができ、私自身も大いに学びました。彼らの発言を通じて、新たな視点やアイデアに触れることができ、自分の考え方や知識の幅が広がったと感じています。 また、学部卒の学生とのグループワークや活動を通じて、自分が社会人として培ってきたフィルターや先入観から解放されることができました。彼らの新鮮な視点やアプローチは、私にとっては社会や会社に対して初心に戻るような感覚をもたらしました。このような交流を通じて、相互に刺激を受け合い、成長することができました。 さらに、I専攻のカリキュラムは実践的で充実しており、実際のビジネスケースやプロジェクトに取り組む機会が多くありました。これにより、学んだ理論を実際の現場に適用し、問題解決能力やリーダーシップスキルを磨くことができました。また、教員や同級生との議論やディスカッションを通じて、自分の考えを深めることができました。 多様な視点や経験を持つ仲間と学び、自己成長を促す環境に身を置くことができたことは、私にとって貴重な経験であり、将来のキャリアにも大いに影響を与えるものと信じています。

5)今後のキャリアプランについてお聞かせください。
私はI専攻で学んだMOTと技術士の資格を活かし、技術コンサルタントとしての活躍の場を見つけることを目指しています。技術コンサルタントとして、企業において技術の最適化やイノベーションの推進を支援し、組織の成長と競争力の向上に貢献したいと考えています。 また、現在取り組んでいる研究をさらに発展させることも目標の一つです。そのため、経営学の博士号取得も将来の展望として視野に入れており、研究の幅を広げながら学術的な成果を追求したいと思っています。 将来的には、企業や組織において技術と経営を融合させる役割を果たし、持続的な成長やイノベーションを推進することに貢献したいという強い志向を持っています。そのためには、常に学び続ける姿勢を持ちながら、実務と理論を結び付けることが重要です。業界の最新動向や経営環境の変化に敏感に対応し、幅広い知識と実践的なスキルを備えることで、リーダーシップを発揮し、企業の成長に寄与していきたいと考えています。

6)残りの学生生活に関して、どのような展望をお持ちでしょうか?
研究の成果をより広く共有するために学術の場での発表を行いたいと考えています。学協会や学会などで研究成果を発表し、他の研究者や専門家からの意見やフィードバックを受けながら、研究をより深化させることを目指しています。その過程で論文の精度を高め、最終報告に向けての準備を進めていきたいと思っています。 また、私の研究では統計学や多変量解析などのデータサイエンスの知識や手法が重要な役割を果たしています。この分野における知見をさらに深め、将来のキャリアに生かすためにも、自己研鑽を怠らずに取り組みたいと考えています。最新の研究や技術動向に対しても敏感であり続けることで、学生生活を通じて得た知識とスキルを実践的に活用することができると考えています。 残りの学生生活を充実させ、学生としての貴重な時間を楽しみつつ、将来のキャリアにつながるスキルや知識を身につけていきたいと思います。

修了生の声

修了生 水野 隆さん(コニカミノルタ株式会社 ヘルスケア事業本部 勤務 2022年3月修了 林田ゼミ)

1.プロフィール
2022年3月修了の水野 隆と申します。1997年3月に東北大学大学院 工学研究科 電気・通信工学専攻の博士前期課程を修了し、GE横河メディカルシステム株式会社 (現: GEヘルスケア・ジャパン)に入社。その後コニカミノルタ株式会社に中途入社しました。学生の頃に音響物理工学を学び、社会人になってからは、一貫して超音波診断装置に関わる技術開発・商品開発に携わっています。

2.なぜ東京農工大学のMOTを選択したのか
私自身、これまで要素技術開発や商品設計を中心に仕事をしてきました。商品の根幹をなす技術に関わってはいましたが、事業全体を俯瞰して見ると、担っているのはほんの一部分にすぎず、決められたQCD(性能品質/コスト/提供時期)のなかでの活動でした。 そのようななか、5年ほど前に、社長室特命プロジェクトのメンバにアサインされ、「女性を取り巻く医療環境」を題材に事業提案を行う活動に参画する機会を得ました。部門を横断したメンバが集まり、顧客価値提供に至るストーリを真剣に議論し、これだ!という提案を上層部に幾度となく行ったのですが、結果として事業テーマ化を認めてはいただけませんでした。自身には判断する側の視点が不足していたのです。また同じ頃、部門内のボトムアップ型イノベーション活動の委員も担当しており、個の活動を事業テーマ化するためのしくみにとても興味を持っていました。そこで、新規事業をどのように提案し、立ち上げていくか体系的に学んでみたいと思いました。MBAではなく、MOTを選んだ理由は、自身が技術開発職であったため、技術シーズから事業に昇華させるベクトルの方が、私に合っているだろうと考えた点にあります。 MOTコースのなかでも東京農工大学を選んだ理由は、2つあります。 1つ目は、社会人学生を対象とした研究マネジメント人材育成プログラムにおいて、自身が事業化を目論んでいるテーマそのものを研究テーマとすることができる点です。戦略企画、事業化計画、組織構築、知財マネジメントを講義で学びながら、ゼミを通して研究テーマを推進し、最終的に研究プロジェクト提案書としてまとめていう活動全てを、社内の事業化提案に活用することができます。将来デバイス化を目論み、技術シーズを温めていた自身にとって魅力的でした。また、企業で技術開発と事業マネジメントの両方の経験がある実務家の先生から指導を受けられることも、ポイントでした。 2つ目は、通学利便性です。勤務先も自宅も多摩エリア(中央線沿線)にある私にとって、東京都心にある学校へ業務終了後に通学するのは困難なため、同じ多摩エリアにある東京農工大学は大変好立地でした。(ただ残念なことに、COVID-19パンデミックのため、入学早々しばらくオンライン講義になってしまったのですが。。。) さらに加えて、国立大学であること、教育訓練給付金制度を利用して割安で学べることも理由にありました。

3.東京農工大学のMOTコースでご自身の目的が達成されましたか?
達成できた点は、プロジェクト研究を進めるなかで、新規事業を創造する際に、情報のピースをどのように組み合わせて、提案のキャンバスを完成させるか、さまざまなケーススタディを通して学ぶことができたことです。 在学中にプロジェクト研究で取り上げた事業化テーマですが、開発エンジニア、販売企画メンバ、さらに応援してくださる臨床医の先生方を巻き込み、現在も継続して活動しています。臨床医の先生方との実証検証は、診療のない土曜・日曜に行うことが多いのですが、在学中は講義やゼミとの調整が難しかったため、真の意味でのフィールドスタディは、MOT修了後に本格化させました。仮説設定したアプリケーションの実現には、実証検証で明らかになった課題の対策も必要で、研究テーマの事業化には、しばらく時間がかりそうです。

4.在学中のお仕事と学生生活の両立についてお聞かせ下さい
職場では、要素開発・商品開発を担うグループでマネジャとして働いていたため、平日夜の講義は2科目程度とし、土曜日は登校してフルで講義を受講しました。COVID-19の影響で平日夜はオンライン講義になりましたが、通学時間を気にせず出席できました。業務との両立は大変でしたが、講義の予習やレポート、自分の研究のための時間は、明確に時刻で区切って捻出するようにしました。突発的な会社業務に備え、講義レポートは早めに着手し終わらせるように心がけました。 2020年4月に入学した私たちの代は、COVID-19影響で入学式は中止になり、在学時期は、学内外の行動がさまざま制限されてしまいました。講義後にちょっと飲みにいこう、という交流が出来なかったのは残念でした。

5.東京農工大学のMOTのカリキュラムはいかがでしたか? 東京農工大学MOTを修了してよかったと思うことはどの様なことでしょうか
多くの講義によって、社会人になってからの仕事での経験について、整理ができたと思います。一方、会計学や経営学等は、初めて学ぶ科目でした。講義は学部新卒学生と一緒に受けるのが、東京農工大学のMOTコースの特長ですが、自分の齢の半分くらいの年齢の若い学生と一緒に学ぶのは新鮮で、斬新なアイディアや考え方は大いに刺激になりました。 修了した今でも、先生、OB/OG、同期生、新入生との交流は、継続しています。拡がっていく人とのネットワークは大きな財産になっています。また、私が修了した翌年度に、会社で同じグループのメンバが、東京農工大学のMOTに入学し、同じ思いが繋がって大変嬉しく思います。

6.在学中、特に印象的な授業・イベント・出来事などはありましたか?
経営戦略の講義では、実在する企業の将来戦略をまとめグループ発表する時間がありました。平日夜や土曜日の講義後にグループメンバが自習室に集まり、議論を重ねて戦略ストーリを作っていくのは、大変でしたが楽しい時間でした。学部新卒学生にとっては、身近な社会人に映ったようで、グループ発表の準備そっちのけで、会社で働くことについて質問責めにあった日もありました(笑)。また、グループ発表で事例とした企業の社員をゲストスピーカとしてお招きし、グループ発表に対して講評いただける機会もありました。考えてきた戦略案について、実際の社員の方とディスカッションでき、とても実践的だったと思います。

7.東京農工大学での学生生活を通じてご自身の変化などはありましたか?
現在は、先行開発を担うグループで働いていますが、ただ技術開発を進めるだけでなく、市場調査や事業化戦略に重きを置くようになりました。Early Phaseだからこそ、シナリオ性の高いビジネスモデル・キャンバスが描けるかを常に意識して、グループメンバと活動しています。

8.これから受験を考えている皆さんへのアドバイスをお願いいたします。
きっと、この記事を読まれているみなさんは、MOTに興味があり、新たな挑戦をしたい、と考えていらっしゃる方だと思います。異業種・異分野、様々な年代の人との学び、同期生やOB/OGとのネットワークは、きっと財産になります。ぜひ一歩を踏み出してみることをお勧めします。

修了生 木下 綾子さん(2018年3月修了 伊藤ゼミ 株式会社ステラコンサルティング 代表取締役)

①プロフィール
高校卒業後に進学した大学・大学院では電気工学科で制御工学の研究室に所属していたのですが、大学院では教授にわがままを言って産業技術総合研究所の知能システム研究部門に派遣させていただき、ロボットビジョンの研究をしました。修了後は電機メーカーに就職し、9年半ほど組込みソフトの開発に従事しました。就職当初は定年退職まで会社員を続けると思っていましたが、2011年にリーマンショックが起きたことをきっかけに考えが変わりました。会社の業績が悪くなり、会社の看板ではなく自分自身の力でお金を稼げるようになりたいと思い、中小企業診断士の受験を始めたのです。働きながら勉強を続けて3年がかりで合格し、その後半年ほどで独立開業しました。現在は株式会社ステラコンサルティングという会社の代表を務め、経営コンサルティング、M&Aアドバイザリー等を行っています。

②なぜ農工大MOTを選択したのか
まず大学院に再度進学するにあたって、MBAとMOTを比較しました。周囲を見てもMBAを修了している方はたくさんいますが、MOTの方はほぼ見かけません。中小企業診断士としての差別化のためにもニッチな方に進むべきと考えました。また、元々電機メーカー出身でものづくりが好きだったこともあり、中小製造業のお客様の支援を強化したいと考えて、MBAよりMOTを選択しました。 それからMOTを実施している大学院を調べましたが、様々なカリキュラムがありました。平日夜、土曜の授業で働きながら通えるコースは農工大MOTだけだったと記憶しています。社会人学生だけではなく、大学から現役で進学してくる若い学生さんと一緒に学べる点も面白いと感じた点です。

③農工大MOTコースでご自身の目的が達成されましたか?
中小企業診断士の試験で経営的な勉強はしたので、その土台に技術経営の知識を+αするという意味では目的を達成できました。私が通っていた当時はURAに関する講義もあり、大学における研究マネジメントという新たな世界を知ることができました。

④在学中のお仕事と学生生活の両立についてお聞かせ下さい
平日の仕事後に数日と土曜に授業を受け、授業がない日に宿題やレポートに取り組みました。プロジェクト研究も並行して進むため、作業内容までタスク出しをして計画的に進めていきました。 会社に勤めている方だとなかなか勉強の時間を作るのも一苦労というお話を聞きますが、私は幸い自営業なので、仕事を少し抑えて大学院の勉強に時間を充てることができました。

⑤農工大MOTのカリキュラムはいかがでしたか?農工大MOTを修了してよかったと思うことはどの様なことでしょうか
基礎科目、マネジメント科目、イノベーション科目、プロジェクト研究から成るカリキュラムで、技術分野に特化したイノベーション科目があるのが特徴的だと思いました。全体的に大企業で働いている方の視点が強かったように思います。せっかくMOTに通われる意欲的な人が集まっていますし、ベンチャーに就職する学生も増えていることから、ベンチャーや起業、資金調達、企業法務等に関する科目があると良いのではないかと思います。また、製造業に就職される方が多いと思うので、生産管理等の科目もあると実践的で良いのではないでしょうか。 MOTで学んだ内容ももちろんよかったのですが、一番よかったことは素晴らしい先生方や学生たちとの知り合えたことです。

⑥在学中、特に印象的な授業・イベント・出来事などはありましたか?
プロジェクト研究では、ニッチトップ起業の成長要因について研究をしました。ニッチトップ企業とは、経済産業省が発表している世界市場のニッチ分野で勝ち抜いている優良企業のことです。公表されている様々なデータを集計したり、ニッチトップ企業数社にインタビューを実施し、その成長要因を探りました。指導教員の先生に指導をしていただきながらかなり時間をかけて研究を進め、ありがたいことに中間報告会で優秀賞を受賞しました。評価をいただけたことで、その後の研究のモチベーションにもなりました。

⑦農工大での学生生活を通じてご自身の変化などはありましたか?
久しぶりの学生生活だったので、非常に楽しませてもらいました。本来であればMOTで設定されている科目を受講すれば良いのですが、折角のチャンスということで韓国語の授業も履修しました。 仕事ではMOTで学んだことが活かしきれているわけではないのですが、徐々に関連する仕事も増えてきました。MOTに関連する内容のセミナー等も依頼されることがあります。中小企業診断士×MOTは親和性が高く、元々持っていた診断士で学んだ知識にMOTでの学びを加えることで他の診断士との差別化になると感じています。

⑧これから受験を考えている皆さんへのアドバイスをお願いいたします。
仕事が忙しくて通えない、学費が高い、様々な理由があってなかなか受験できない方もいらっしゃると思いますが、調整してチャレンジする価値は十分にあります。ぜひ会社やご家族に相談してみることをお勧めします。 農工大のキャンパスは入るだけでフレッシュな気持ちにさせてくれる、緑が多く広々とした素敵なキャンパスです。ぜひ農工大MOTで切磋琢磨できる仲間を作って、新しい世界の扉を開いてください!

修了生 渡部玄 (タグシクス・バイオ株式会社 勤務 2021年度修了生 林田ゼミ)

1.プロフィール
2020年入学の渡部 玄と申します。私は、大学院修士課程を修了後、国内製薬企業の研究所にて創薬化学の研究者として研究開発に約13年従事しました。前半は研究者としてひたすらに有機合成の実験を行っていましたが、後半はプロジェクトのリーダーも任され、プロジェクトの方針立案や他部門とのコミュニケーション、外部との交渉なども経験しました。また、在籍中には研究出向で大学院博士課程を修了しPh.D.を取得しました。 その後、創薬スタートアップへの転職を経て、2021年より現在の会社に入社しました。入社時は事業開発マネージャーとして提携候補へのコンタクトやピッチイベント登壇などの業務に従事していましたが、2022年より取締役COOに就任し事業開発業務だけでなく、社内の研究開発マネジメント、提携先とのコミュニケーション、契約書管理などの業務にも従事しています。

2.なぜ東京農工大学のMOTを選択したのか
製薬企業にて10年以上研究職として研究を行い、特にリーダーとして業務を行うようになった際に、「経営陣はなぜこのような判断をしたのだろうか」とか「会社のパイプラインの優先順位付をどういう理由で行っているのだろうか」といったことに疑問を持つようになりました。社内で経営に携われるのはまだまだ先のことになると思い、まずは経営サイド視座に立って、その思考や背景ある理論を身につけたいと考えていました。 当然、経営について学ぶのであればMBAも候補に上がると思います。MBAやMOTを問わず他大学のビジネススクールについて調べたり、実際に体験入学をしたりする中で、自分が培ってきたキャリアやバックグラウンドを活かすには、技術に立脚した経営について学ぶ必要があると考えたため、MBAではなくMOTを選びました。 また、数あるMOT大学院の中で農工大を選んだ理由は、私が目指す『経営のわかる技術者・研究者』、『技術のわかる経営者』の育成を農工大が目指していたこともありますし、私の専門である生命産業技術コースを設置していることもあります。そして、公開講義にて林田教授の「技術企業経営概論」を聴講した際に、あるケーススタディについて学生が各自の考えることや今後の経営戦略、成長戦略について白熱した議論を交わしているのを目の当たりにして、まさにこのような環境で経営について学びたいと強く感じたことが一番の理由です。

3.東京農工大学のMOTコースでご自身の目的が達成されましたか?
『経営のわかる技術者・研究者』、『技術のわかる経営者』になるという点でいえば、当初の目的はかなり達成されたと考えています。経営戦略、会計、財務、知財、組織論、マーケティング、イノベーションと、多岐にわたって知識と実例について学ぶことができたと思います。 また、いくつかの授業でおこなったケーススタディでは、過去のデータやレポートを参考に自分がその企業の経営陣になったつもりでどのような経営判断をするのかということをディスカッションするのですが、さまざまな業界から異なるバックグラウンドを持った年代も多岐にわたる学生が集まってきているため、自分の経験からは思いつかないようなアイデアや提案に触れることができ、自分自身の視野を広げ、見識を深めることができたと感じています。 もちろん実際に経営に携わるようになると、座学やケーススタディで学んだことがでは当然対応できない場面も多々ありますが、「あのケースの考え方は使えないだろうか」「あの授業でやったことは生かせないだろうか」と自分自身のアイディアや思考の引き出しを増やすことができたのではないかと感じています。

4.在学中のお仕事と学生生活の両立についてお聞かせ下さい
私が入学した2020年4月といえば、皆さん記憶に残っているかと思いますが新型コロナウイルスの緊急事態宣言ちょうど発出された時期に重なり、農工大に入学することを決めた1年前とは全く異なる世界になっていました。仕事も在宅勤務となり、対面授業もなくなり、オンラインでの授業となったことで、慣れない新しい環境でやりくりしていくことはとてもハードでした。一方で、農工大は早くからオンライン授業をうまく使っていた印象があり、平日夜の授業には大学へ移動することなく仕事後すぐにでも授業に参加できたため、以前の学生よりはスケジュール管理はしやすくなっていたのかもしれません。 また、授業は平日夜と土曜のみですが、各授業のレポートはもちろん、グループ発表に向けたミーティングもありますし、ゼミのプロジェクト研究の推進のための各調査やCS (Case Study) / FS (Field Study)などの報告会の準備などやるべきことは山ほどあります。慣れるまではレポートの締め切りが間に合わなく学生時代以来の徹夜を何度かしてしまった点は、自分自身のタイムマネジメントができていなかったと反省していますが、途中からは多少は改善を図ることができ、そういった部分でも成長ができたのではないかと思います。 もちろん、このようなハードな環境でなんとか仕事と学業を両立して2年間やり切ることができたのは、職場の上司や同僚の理解、農工大の同級生、先輩後輩の協力と、何より家族のサポートのおかげだと考えております。

5.東京農工大学のMOTのカリキュラムはいかがでしたか? 東京農工大学MOTを修了してよかったと思うことはどの様なことでしょうか
カリキュラムに関しては、ヒト・モノ・カネ・技術について網羅的に各分野を学習できましたし、座学、クラス討議、グループワークがバランスよく組み込まれていると感じました。先生方も各産業技術分野のスペシャリストの教員と、経験豊富な実務家教員がいらっしゃるため、疑問に思ったこともすぐに相談できる環境で、非常に恵まれていると感じました。 また、ゼミを主体に行うプロジェクト研究は、CS、中間発表、FSと進んでいきますが、しっかりとこれら課題に取り組み、マイルストーンを達成していくことで、最終報告の骨子が出来上がるようなプログラムを組んでいる点は、非常に良かったです。 さらに、先輩、同窓生、後輩と社会人、新卒学生関係なく、優秀な方ばかりでした。普段の職場や業界では決して接点ができないような多様性のある方々と出会えることはMOTの魅力の一つだと思います。在学中は意見を交わし合い、切磋琢磨できる最高の学友でしたし、卒業後も連絡を取り合う人もいるため、非常によいネットワークを構築することができた点は、自分の人生にとって価値のあるものとなりました。

6.在学中、特に印象的な授業・イベント・出来事などはありましたか?
公開授業で衝撃を受けた林田教授の「技術企業経営概論(現:グローバル経営戦略概論)」と「技術企業経営戦略論(現:経営戦略概論)」は、実際に学生となってから受講しても印象的で、自分自身が一番成長できた授業でした。 講義では特定企業のケース取り上げ、自分自身がその会社の経営陣の立場に立ってケース資料だけでなく内部環境・外部環境を加味して経営課題に対して回答を準備する必要があります。さらに、実際に授業では他の学生と全体討議を行うことで、多様な意見に触れ、その場で新しいアイディアに到達することもしばしあるため、自分の視座や思考より高めることができたと考えています。また、ケースレポートでは同様のことを資料へ落とし込むことで、データに裏付けられた資料を作成することを意識的に実行することができるようになりました。さらに、ケースグループ発表では、それをチームとして意見、方針をまとめ、プレゼンにする過程で、他者の意見を尊重しつつも、チームとしての戦略を立案していくことで、かなり実戦に近い形での提案をする経験ができたと考えています。 両授業は非常に得るものが多く、価値がある授業でしたので、2年次もオブザーバーとして授業に参加させてもらいました。1年次には取り上げなかったケースは新鮮な気持ちで取り組むことができましたし、同じケースもいくつかありましたが、参加メンバーが違えば議論の方向も全く違う方向へ進んでいくため、前年にはなかった意見に触れることができた点は、翌年も参加してよかったと感じています。また、前年のレポートやグループ発表で扱った企業が実際にどのような戦略を実行し、翌年どんな結果になっているのかということをフォローするができたので、答え合わせではないですが、実際の経営陣が何を考えて経営方針を決めているのかに少しは近づくことができたと考えています。

7.東京農工大学での学生生活を通じてご自身の変化などはありましたか?
私は、在学中に典型的な製薬企業からベンチャー企業へと転職したため、仕事も、環境も、生活も、考え方も大きく変化しました。転職を決意した背景には少なからず農工大MOTで学んでいたことが影響を与えたと考えています。また、学生生活で考えると、出願時から中間発表まで行っていたプロジェクト研究のテーマは、そのまま進めては自分自身にとって中身のない内容となってしまうため、転職先に価値を生み出す内容へと変えざるを得ませんでした。そんな状況ではありましたが、ゼミの林田教授にはプロジェクト研究の新しい方向性について、親身になって、また時間を惜しまず何度も相談に乗って頂き、最終的に自分にとって非常に有用な内容となり、プロジェクト研究を完遂することができました。また、在学中にプロジェクト研究に関連した内容を学会で発表した際には、質疑応答の際に興味深い視点だとコメントをもらい、学外に向けても自分自身の研究成果として発表する機会を持つことができ、良い経験となりました。 そして、農工大MOTの2年間で培った知識と経験は、この予測困難なVUCAな時代でもサバイブしていくための自分自身の軸と自信の構築に繋がったと考えています。

8.これから受験を考えている皆さんへのアドバイスをお願いいたします。
私の好きな言葉に、吉田松陰の「夢なき者に理想なし 理想なき者に計画なし 計画なき者に実行なし 実行なき者に成功なし 故に夢なき者に成功なし」という言葉があります。皆さんの夢の実現に、農工大MOTで得られる知識、経験、出会いが価値をもたらすと感じたならば、是非とも受験されることをお勧めします。 このページを見ている皆さんは、農工大のMOTに興味を持って、受験を考えて、もしかしたら迷っている方もいるかと思います。人によってバックグラウンドやMOTに参加する目的が違うかとは思いますが、まずは公開授業や入試説明会に参加したり、ご自身の興味がある分野の教員にコンタクトをしたりしてみてはいかがでしょうか。最初の一歩を踏み出すことが何よりも重要だと思いますし、実際に農工大MOTに触れることで、今まで気づかなかったことや自分がなぜMOTに興味を持ったのかを再確認できるのではないかと思います。 農工大MOTで過ごす時間は、非常に濃密で、想像しているよりも自分自身を成長させることができる、有意義な時間になると思います。そして、農工大MOTでは、社会人学生のOB/OGと現役生の繋がりもあるため、将来懇親会などでお会いできたら嬉しいです。