MOT 東京農工大学大学院 産業技術専攻

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専任教員からのメッセージ / 早出教授

早出広司 教授

技術経営を自らの競争力とする研究者・開発者を養成することが
産業技術専攻の使命

【担当科目】
・バイオツールビジネス論
・ナノバイオテクノロジー学
・バイオテクノロジー知財戦略論

バイオ産業分野で新しい競争力のある生命分子を提供

専門はバイオビジネス分野です。タンパク質を中心とした生命分子をデザイン・開発し、バイオ産業分野に新しい競争力のある生命分子を提供し、新しい診断技術や生理活性物質を提案するのが研究テーマです。
生命分子を作る研究には、大きく2つの方向性があります。1つは新しいバイオデバイスや医薬品への応用です、もう1つは「合成生物学(シンセティック・バイオロジー」と呼ばれる生命分子を人工的に創り出す新しい分野です。
アルツハイマー病やパーキンソン病の原因となるタンパク質の研究も行っています。これらの病気に共通しているのは、タンパク質が構造を変えて「アミロイド繊維」を作ることです。我々は、その中でも特にパーキンソン病の原因物質であるα-シヌクレインに注目し、温度を上げていったらタンパク質のどこが壊れてアミロイド繊維に変わるかを、コンピュータを使ってシミュレーションする研究を行っています。
また、バイオセンサーもしくはバイオセンシングという技術も我々の研究分野です。自分の血糖値を測定する自己血糖診断装置はよく知られていますね。

『自己血糖診断装置を使って血糖値の測定をわかりやすくデモする早出先生』
 
合成生物学をエンジニアリングにするための要素技術を研究・開発

合成生物学で特に我々が注目しているのは、新しいバイオ燃料を作る技術やバイオを使って環境を保全する技術です。いまは、そのために必要な要素技術を開発している段階です。生物を作るには、さまざまな技術が積み重なって、誰もが使える状態になっている必要があります。そうなってはじめて生物学をエンジニアリングできるのです。
エンジニアリンクで重要なことは、標準化されていることです。どこでネジを買っても、どこでナットを買っても、規格さえ合っていれば合いますね。これがエンジニアリングです。
では、合成生物学がそうなっているかというと、けっしてそうはなっていません。そこを標準化し、誰でもが使える技術プラットフォームを構築し、システムとしてものを考えていこうというのが、いまの合成生物学の姿です。

『エンジニアリングでは標準化が重要』
 

学生が参加している「iGEM」というプロジェクトもあります。iGEMとは「International Genetically Engineered Machine competition」のことで、マサチューセッツ工科大学で毎年開催される合成生物学の大会です。遺伝子的に合成された機械(生物学的デバイス)の競技会、ロボコンの遺伝子版だと思っていただければよいでしょう。我々は2009年から参加し、2010年にはゴールドメダルをとりました。

『iGEMでは、2010年ゴールドメダルに輝く』
 
産業技術専攻は技術経営を競争力にできる技術者・研究者を育てる

産業技術専攻を検討している皆さんの中には、生命工学科と産業技術専攻の生命産業技術コースでは何が違うのか疑問を抱いている人も多いと思います。違いは「自分が何を競争力にしたいか」です。

たとえば、研究だけをやってきた人間が、技術者・研究者の卵として企業にアプローチをかけたとします。きっと「私はこんな研究をしました」と一生懸命アピールすることになるでしょう。しかし、企業側は研究の成果を求めているわけではありません。むしろ、研究によって何を養ったかを聞きたいのです。学生はそこがなかなかわからない。どうしても「いい研究成果を出したい」と考えがちです。

もちろん研究成果は大事です。そして、自分の研究を自分の言葉で説明できることは、技術のフィールドで技術者として仕事をしていくうえで必要なことです。
しかし、それだけの人間とそれに加えて「なぜその技術を開発したのか」「どういう考え方に基づいているのか」あるいは「基本特許は出されているけれども、まだ選択発明の余地があるので、ここを開発しています」といった知財の観点で説明ができる人間と、企業としてどちらが有望な人材かということなのです。

産業技術専攻は、このように自分が目指す競争力に技術経営を加えた技術者や研究者を養成していく場所です。ですから、自らの競争力として技術経営を身につけたいと思ったら、ぜひ産業技術専攻を目指してほしいと思います。
もちろん、研究に関しての競争力は、我々はどこにも負けません。産業技術専攻には、バイオ分野、機械分野、情報分野、化学分野、そして産業技術に関わる人間が選りすぐられて集まっています。その技術力は、工学部の中でもトップレベルです。そのうえで技術経営を自分の競争力に加えたいという方は、ぜひ、応募していただきたいと思います。

『研究成果も重要ですが、自分の言葉で説明できることがさらに重要』