MOT 東京農工大学大学院 産業技術専攻

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実務家教員からのメッセージ / 木幡教授

木幡幸弘 教授

会社全体をマクロで見る唯一のツール「会計」を自ら学ぶ力を身につけてほしい

【担当科目】
・原価計算学
・財務会計学

「会計」は会社全体をマクロで見る唯一のツール

産業技術専攻では財務会計と原価計算の会計分野の2科目を担当しています。まず、会計とは何かという基本的なところから話しましょう。

会計とは「会社全体をマクロで見るための唯一のツール」です。

たとえば製造業であれば、会社は株主もしくは銀行から資金を調達して原材料を購入し、それを加工して製品を作り、販売します。その場合、生産に関しては生産管理の知識、販売に関してはマーケティングの知識、あるいは人を使うところでは人事管理の知識が必要です。もちろんITや技術的な知識・スキルも必要になってきます。それぞれの分野は非常に重要ですが、あくまで会社の活動の一部分です。その会社の経営全体をとらえるには、今のところ会計しかありません。京セラの創設者である稲森和夫さんも「真の経営者になるためには会計の知識が絶対に必要である」とおっしゃっています。まさに、「会計の知識なくしては経営の理解なし」なのです。

会計の課目は、大きく「財務会計」と「管理会計」に分かれます。財務会計は、貸借対照表や損益計算書を中心とした財務諸表を作成する会計です。もう1つの管理会計は、会社のビジョンから始まって、そのビジョンを達成するにはどのくらい利益を上げる必要があるかといったことを計画する会計です。どちらかというと、将来のことを考える会計といえます。一般に「会計」というと財務会計のイメージが強いと思いますが、より重要なのは管理会計です。重要度でいえば私は管理会計が8、財務会計が2くらいだと思います。

『自らの経験を元に、会計の位置づけを説明する木幡先生』
 
会計に興味を持ち、自ら学ぶ力を身につけてほしい

会計は歴史の浅い学問です。本格的な会計ルールができたのは、1929年のアメリカの大恐慌以降です。日本ではさらに歴史が浅くて、第二次世界大戦後にすぎません。したがって、どんどん変化しています。いまは国際会計基準(IFRS)が注目されていますが、次々と新しいルールが出てきて、5年もたてば陳腐化してしまいます。

したがって、今、私の講義を100%理解しても、5年たったらその知識の半分は死んでいるかもしれません。そういう時代なのです。ですから、学生の皆さんには会計について自分で学習する力をつけてほしいと思います。
それには、会計に興味を持ってもらわないと話になりませんので、私の講義では、実際の会社の決算書や、その時々の新聞記事を取り入れています。
技術系の学生は、会計の知識がまっさらな状態でこられる方がほとんどです。そういった学生にとっては、初めて接する分野なので新鮮だと思います。
社会人の学生は社会に出てさまざまな経験を積んでいますが、会計を体系的に学んだ方はほとんどいません。そういった皆さんにとっては、今まであやふやに思っていたことや疑問に感じていたことが整理できると思います。

『自ら学ぶ力を身につけてほしい』
 
これからは海外に出て行くのが当たり前の時代、技術者にも会計知識は不可欠

私はODAの仕事などでインドネシアに駐在していたことがあります。その際には、インドネシアへの進出を考えている日本の中小企業の相談も数多く受けました。
そうした中に、金型を製造している静岡の会社がありました。リーマンショックで周囲の金型会社がバタバタと倒産する中、その会社は生き残ることができました。理由はインドネシアに進出していたからです。インドネシアはリーマンショックの影響をほとんど受けなかったため、インドネシアの仕事を日本に回すことで生き残ることができたのです。

ときどき、産業の空洞化が議論になりますが、もはやそういう議論をしている時代ではありません。海外に出て行かなければ、日本そのものが沈みかねない、そういう時代なのです。学生の皆さんには、ぜひそこだけは認識しておいてもらいたいと思います。
実際に、技術者が海外に赴任されるケースは非常に多いのです。その場合、日本では課長職ぐらいの方が海外子会社で二段階ほど特進し、部長や取締役などの立場になるケースは少なくありません。つまり、いきなり経営を任せられるのです。そのとき、鳥瞰図的なものの見方をする会計の知識が間違いなく役に立ちます。
たとえ海外に行かなくても、技術者が経験を重ねて会社の中で上に上がると、管理の仕事が増えていきます。技術者であっても、いずれは経営管理の立場に立たざるをえなくなるのです。そのとき、会計の知識が必ず必要になります。

『技術者にも会計知識は不可欠』
 

産業技術専攻の学生は、非常に熱心で向上心が強いと思います。特に社会人学生は、昼間は仕事をして、夕方から来られているわけですから、とても立派だと思います。私の仕事は、全15回の講義を終えたとき、来ていただいた皆さんに会計に興味を持ってもらうことだと思っています。向上心がある方なら、どなたでも歓迎します。

『ゼミの前、学生とのリラックスしたひととき』