MOT 東京農工大学大学院 産業技術専攻

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特別招聘客員教授特別講義の開催報告

「何で企業は倒産するか」

農工大MOT(技術経営):お知らせ
2005.08.29更新

募集要項

「何で企業は倒産するか」
講師:日産自動車株式会社 副会長 伊佐山 建志

参加人数

農工大MOT学生 45名
農工大MOT教員・職員 18名
一般参加 17名

特別講義「何で企業は倒産するか」

伊佐山先生は2001年より日産自動車の副会長に就任され、カルロス・ゴーンの片腕として、日産自動車のV字回復を推進してこられた。本ではいろいろと紹介されているが、実際の話を直接聞けた感銘深い講義であった。

講義は次の話から始まった。副会長に就任してもゴーン社長(当時)からは、1週間過ぎても何の呼び出しもなかった。そこで、伊佐山先生は、「地位や職責ではない。日産のために何をするかという提案のない人間には会う必要がない。」というゴーンの意図に気づかれた。そこで早速自分の改革提案を持って、ゴーン社長に会われ、その後、数々の実績を上げられたが、置かれた環境において、「何をやるべきか」ということの厳しさを、自らの経験を基に話された。

以後、このような実例をまじえて、従来の日産では「あたりまえのこと」が実践されておらず、そのために何を考え、実行してきたかを説明された。結局は、一人ひとりが倒産という事態に直面するまで、何とかなるだろう。悪いのは他の部署で、自分達ではないという思いに浸っており、経営の厳しさを実感していなかった。

例えば、技術開発陣は特許出願することが目的で、それを基にライセンス収入を得る厳しさが欠けていた。良い技術さえ開発すれば、それで商品ができるという考えが充満していた。

良い車は、どんな商品を作るかというコンセプトがあって、そのために必要な技術や素材は何かを考え、欲しい技術や素材は自社にこだわることなく、アライアンスによってでも手に入れるという姿勢にかけていた。この部分は、技術経営の重要な部分で、機会があれば、再度講義をお聴きしたい。

初期の経営改善の基軸となった、@購買体制の見直し(購入価格を従来の2〜3割は低減したこと)、A生産体制の見直し(必要生産数量の2倍の生産能力があったことの改善)、Bビジネスに直結していない経費のカット(従来からのお付き合いで出費していた金の見直し)が、背景と共に紹介された。これら施策の推進に力を発揮したのは、CFT(クロス・ファンクショナル・チーム)であった。各部署からの精鋭が集まって知恵を出し合うCFTでは、各部署の垣根を取り去って、全体のために思考することが実現でき、V字回復の原動力となった。

結論は、「あたりまえのことをきちんとやること、従来の日産はそれができていなかった。今は全社が緊張感を持って業務に取り組んでおり、日産の株は買いである。」と結ばれた。

倒産を現実のものとして覚悟した人達ゆえにできたかもしれないという思いはするが、「どんな環境に立っても、やることはまだまだある。」ということを実体験された方からの実績に裏付けられた感銘深い講義であった。

グループワーク

MOT学生が、あらかじめ与えられた下記のグループワーク課題を、それぞれのグループ毎に、2から3回集まって事前討議をした結果が当日発表された。
情報が下記の内容しかない中で各グループは熱心に情報を集め、熱意あふれるプレゼンを行った。終了後、参加者の挙手による発表評価の結果、防御力グループが1位と評価された。
発表内容はいずれも、この半年のMOTの研鑽の成果を示すものであった。

競争力(商品開発) 先端商品であるハイブリッド車の開発を迫られている。
商品のマイナーチェンジを後回しにするか?
防御力(訴訟力) 売れ筋商品の意匠が中国でコピーされている。
コピーしている企業は、その省納税額1企業だ。さて、どうするか?
決断力(経営力) 赤字経営が続いている。経費を節約しないと倒産するかも知れない。
役員には報酬をカットし、従業員に「ケチケチ作戦」を取らせるのか?
組織力(企業文化) 業績が回復して、従業員は満足病に罹っている。
今こそ、超勤する従業員を表彰することで、モティベーションを高めるチャンスか?
トップ企業の動向を注目して、彼らのやることを真似てみるか?
組織力(シナジー) 自社の弱みを補完する企業がいる。
しかしその企業は業界でトップとなったことがない。M&Aで乗っ取ればよいか?
理屈ばかりこねて、他と協調しない人間が1人いる。
時間をかけて理解させるしかないか?