東京農工大学 農学部 森林利用システム学研究室
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研究分野について/森林利用システム学の学問分野

■森林利用システム学とは

まずは森林利用システム学という学問の内容を説明しましょう。森林利用システム学はまだ耳新しい言葉であり、その内容はこれから作り出される若い研究領域です。一言で表すなら「森林を守るために利用する学問」です。

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■新たな期待

環境の大切さが叫ばれ、森林の重要性も認識されるようになってきました。それにともない私たちの学問もより広い分野の問題を扱うようになりました。日本でも林学という伝統的な学問体系から、森林科学という新たな枠組みを作り対応しようとしています。その大きな流れの中で森林利用システム学が期待されているのはどのようなことでしょう。私たちもその期待をはっきりと描けるわけではありません、ここには現在考えている姿を書いてみます。今後研究を進めていくにしたがってその姿は明確に、具体的にしていくつもりです。

■森林と人間

森林が最も驚異に思っていることは、人間社会が行う破壊行為ではないでしょうか。森林は自身を再生する力をもっています。しかしそれ以上の力で破壊行為を行うことは、人間と森林のバランスを崩すことにつながります。その原因は森林資源は無限であり農業や生活にとって邪魔な存在であるといった誤った認識がまだ存在しているためであると思われます。このままでは人間にも必ずしっぺ返しがくるでしょう。過去の歴史においても森林の衰退が原因で滅んだ文明はいくつもあります。地球上の森林の衰退とともに世界の文明が滅んでしまうことはないと思いますが、そうならないためにも人間の技術によって森林を守り再生することが必要となっています。

■森林の保全と利用

森林の伐採は絶対ダメ!といった意見を聞くことがありますが、これが一概に正しいと思わないで下さい。森林は再生力のあるものです。伐採の方法、強度、目的を適切に行えば持続可能な資源となりうるのです。このような考えのもとでは森林を利用することと、保全することとは同じ範疇の問題であるといえます。明日のことを考えた持続可能な管理技術こそが私たちの目指すのものなのです。その技術の確立に対して私たちの研究課題は3つのグループに整理してみました。

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■技術開発

まず1つ目のグループは森林を利用するための技術の開発です。特に工学的な技術の開発です。林道を開設したり、樹木を伐採したりする際の作業効率の向上、安全性の向上を考えています。また人間ばかりでなく森林環境へも優しい作業を行える技術の開発も同時に考えています。とりわけ、山岳森林で雨の多い日本では、森林と水と土とを乱さない範囲で生産性の高い方法を研究する必要があります。森林・土地と結びついた工学が求められています。

■機能評価

2つ目のグループは森林の評価をするために機能を解析することです。森林が人間や生態系にとってどれくらい価値があるか評価しています。評価をするためにはそれぞれの要素を解析する必要があります。評価の対象もさまざまです。地形、水文などの物理的環境、動物や植物の生物環境、林道や治山、施設などの作業環境などの直接森林に関係したものから、地域住民あるいは国民社会の期待といった間接的な要素までのさまざまな要素の中から評価に必要なものを選び出し解析を行っています。森林の価値を見いだせなければ森林が存在している理由がないわけですから、森林を守っていく上で理論的に重要であると考えられる分野です。

■事前予測

3つ目のグループは森林を利用するにあたって影響を予測すること(アセスメント)です。現在の技術水準により森林が潜在的に持つ機能をどの範囲まで開発できるか、開発を行うにはどのような方法が可能か、そして開発によりどのような変化が生じると予測されるのか、を知ることです。特に一度傷ついてしまうと再生するのに長い時間を必要とする森林に予測をすることは重要なことです。森林を保護する場合にも手入れの影響を予想しながら行います。予測は経験的に分かっている部分もありますが今後の森林を利用する上で原則的なルールを構築することが森林利用システム学の中心課題です。

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■システム学

私たちの研究室の研究領域は以上の3つで説明することができます。そして更に私たちに期待されていることは、これら3つのグループを結び付けることにあると考えています。部分の機能が分かっただけでは全体の機能が理解できないような対象がたくさんあります。生物体や生態系を理解するにはシステムとして見ていく必要があります。技術を高めれば利用できる範囲は広がり、評価が深まれば予測はより正確にできるでしょう。利用と保全のあいだにある問題を考えることはさまざまな要素から構成されている森林を扱うだけでも分からないことが多くあるのに、その上に人間までからめて考えるなんて最も難しい問題なのかもしれません。


■さいごに

森林利用システム学は、森林を有機体としてとらえ森林空間全体としての働きを知ろうとしています。対象は1 ha程度の小さな林分から大きな流域森林へ、そして海外の森林も含めて森林利用システム学の対象となります。



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