Abstract
バリダマイシンA(VMA)のトマト茎葉部への散布によって,土壌病害である萎凋病の発病が抑制されると共に,全身獲得抵抗性(SAR)関連分子マーカーの発現が誘導されるが,これら2つの現象の関係は明らかになっていない(Ishikawa et al.,2005). VMAの萎凋病発病抑制機構解明のために,VMA(100 μg/ml)を茎葉散布したトマトの茎葉部及び根部組織における抵抗性関連遺伝子(SAR関連:aPR-1,aPR-2,aPR-3,aPR-5,非SAR関連:bPR-2,bPR-3,PR-6,PR-7,LeCAS)の発現をRT-PCR,ノザンブロッティング,リアルタイムPCRで調査した. VMA茎葉散布個体において,SAR関連遺伝子群の発現は茎葉組織中では著しく増加し,根部では絶対量は少ないものの有意に発現が増加した.一方,VMA茎葉散布によって,bPR-2 ,PR-7,LeCASの発現は茎葉部と根部でほぼ同等に増加した.これらの結果から,萎凋病菌感染部位である根部で発現が増加したSAR,あるいは,bPR-2 ,PR-7,LeCASが関わる抵抗性誘導経路が本病抑制に関与することが示唆された.
平成21年度日本植物病理学会関東部会(2009年9月、藤沢市)口頭発表