Abstract

交配不全性（asexual）子嚢菌Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici（Fol）のゲノム上に機能性を保持していると推定される交配型遺伝子領域（MAT1）が見出され（Arie et al. 2000）、本菌は本質的にヘテロタリックな交配能を保持していると推定される。Folでは同一VCGに属する菌株間でのみ菌糸融合及びヘテロカリオンを形成できるが、同一VCG内には異交配型菌株は見出されず、交配不全の一因であることが示唆されている（Kawabe et al. 2005）。また、Fol菌株の染色体パターンをパルスフィールドゲル電気泳動で調査したところ、同一VCGに属する菌株間でも多様性が認められた。そこで、同一のVCGに属し染色体パターンも同一でありながら、異なる交配型の菌株を人工的に作出し、交配不全性の原因を追究した。すなわち、Fol Tomino1-c株 (MAT1-2) のMAT1領域約3.5 kbを880621a-1株 (MAT1-1) のMAT1領域約4.5 kbと入換えた形質転換体Tomino1-c (ΔMAT1-2: MAT1-1) の作出を試みた。