Abstract
バリダマイシンA(VMA)は茎葉散布によって,土壌病害であるトマト萎凋病の発病を抑制する。また,VMA処理はトマト組織中のサリチル酸(SA)濃度を高め,全身獲得抵抗性(SAR)を誘導する。本研究は,組織内にSAを蓄積できないNahGトマトを利用して,VMAによる萎凋病発病抑制がSARによるか否かを明らかにすることを目的として行った。NahGトマトに50 μg/ml以上の濃度のVMAを茎葉散布すると,親株cv. Moneymakerでは現れない激しい薬害が生じた。これは,VMAによって蓄積が誘導されたSAがNahGトマトではNahG(サリチル酸ヒドロキシラーゼ)によってカテコールに変換された影響であることが推測された。NahGトマトへの10 μg/ml VMAによる萎凋病発病抑制効果は,ガラス室における試験では低下したのに対して,人工気象器における試験では維持された。以上の結果は,VMA茎葉散布による萎凋病発病抑制にSARおよびその他の抵抗性誘導機構が関与している可能性,抵抗性誘導が環境の影響を受ける可能性を示唆した。
*住友化学、**理研
平成18年度日本植物病理学会関東部会(2006年9月、厚木市)口頭発表