日本産ホウレンソウ萎凋病菌の系統解析
Phylogenetic analysis of Fusarium oxysporum f. sp. spinaciae in Japan
川部眞登*・勝部和則**・吉田隆延*・有江 力・土屋健一*
Kawabe, M., Katsube, K, Yoshida, T. , Arie, T. and Tsuchiya, K.

Abstract

日本国内で分離されたホウレンソウ萎凋病菌(Fusarium oxysporum f. sp. spinaciae)の菌株について,rDNA intergenic spacer領域(IGS)と交配型遺伝子領域(MAT1)の塩基配列情報に基づいた分子系統解析を行い,交配型,菌糸和合群,病原性および採取地と系統関係について総合的な考察を行った.その結果,国内より単離されたホウレンソウ萎凋病菌は,少なくとも4つ以上の系統(S1〜S4)からなり,S1系統に多くの菌株が含まれること,全ての菌株の交配型がMAT1-2であること,および系統間で病原性に差が見られないことが示された.また,他の分化型ではVCGと分子系統との間に関連性が報告されているが,本分化型では認められなかった.さらに,S1系統には本州の広い地域と四国より分離された菌株が,S3系統には福岡・京都・福井より分離された菌株が含まれた.S2とS4系統はそれぞれ単一の地域より分離した菌株が含まれた.これらのことより,ホウレンソウ萎凋病菌は,複数の系統より構成されていることが推測された.
*農環研・**岩手農研


平成16年度日本植物病理学会関東部会(2004年9月、府中市)口頭発表