本邦で発生しているトマト萎凋病菌Fusarium oxysporum f. sp. lycopersiciレース3複数菌株の非病原力遺伝子に基づくタイピング
Typing of isolates of the tomato wilt fungus Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici race 3 in Japan based on avirulence genes.
稲見圭悟・森田泰彰*・岩谷香緒里**・松崎聖史***・新宅ユリエ****・寺岡 徹有江 力
Inami, K., Morita Y.*, Iwatani K.**, Matsuzaki K.***, Shintaku Y.****, Teraoka T., Arie, T.

Abstract

トマト萎凋病菌レース3 は,レース1 から,非病原力遺伝子AVR1とAVR2が変異して出現したとされ,AVR1には欠損(−)とトランスポゾンによる破壊(Tn)の2 タイプ,AVR2 には3 タイプの点変異(134G>A,137G>C,121G>A)が報告されている.本邦で主に発生していたレース3 はrDNA IGS系統樹でA3クレードに属し(Kawabe 2005)そのタイプは[AVR1,−;AVR2,121G>A]であり,2009年に高知で分離された株(稲見 2010)は[Tn;121G>A]/ A2 クレードであった.今回,熊本,福岡,高知,愛知,青森,北海道から分離された13 株を供試したところ,6 株(熊本,福岡,愛知,青森,北海道)が[−;121G>A]/ A3 クレード,5 株(高知)が[Tn;121G>A]/ A2 クレードで,1 株(青森)が[−;122T>A]/ A1 クレード,1 株(高知)が[−;146C>T]/ A2クレードであった.トランスポゾン挿入でAVR1 が変異した株[Tn]は高知以外から見出されなかったものの,本邦のレース3 は新たなタイプの発生によって多様化しつつあることが示唆された.


*高知農技セ Kochi Pref., **青森防除所 Aomori Pref., ***愛知農試 Aichi Pref., ****Musashi Seeds


日本植物病理学会平成23年度大会(2011年3月、府中市で開催予定でしたが開催が中止されました。発表はなされたものとされています。)口頭発表