Abstract
イネいもち病菌Magnaporthe oryzae の交配過程は未詳の部分が多く残されている.高い交配能を有する中国産のCH598 株(MAT1-1)にeGFP 遺伝子を,CH598 株(MAT1-我々の見出したマンノース結合型イネレクチン(MRL)を常時高発現させたイネはいもち病に対する抵抗性が増強された(新城ら,2010).逆に,RNAi によりMRL 遺伝子発現を抑制させたイネでは親和性・非親和性菌株に関わらず,抵抗性が低下した.MRL とGFP の融合タンパク質を過剰発現させたイネ葉鞘では,いもち病菌の侵入菌糸が部分的にGFP 蛍光を帯びていた.このことからMRL 常時高発現体イネでは,細胞内に増量したMRLがいもち病菌表面の糖鎖分子と相互作用していることが示唆され,直接的あるいは間接的に抵抗性の増強に関与していることが推察された.またMRL はストレス処理下で葉身の維管束系組織で強く発現したことから,導管内で増殖する白葉枯病細菌に対するMRL 発現抑制体イネの病害抵抗性を検証したところ,病斑長が進展し,接種葉内の生菌数も増加した.この結果からMRL はイネいもち病だけではなく,イネ白葉枯病に対する抵抗性にも関与していることが示唆された.
日本植物病理学会平成23年度大会(2011年3月、府中市で開催予定でしたが開催が中止されました。発表はなされたものとされています。)ポスター発表