Abstract
イネいもち病菌Magnaporthe oryzae の交配過程は未詳の部分が多く残されている.高い交配能を有する中国産のCH598 株(MAT1-1)にeGFP 遺伝子を,CH598 株(MAT1-2)にDsRed2 遺伝子を導入し,両蛍光タンパク質標識株を対峙培養して交配過程を経時的に蛍光顕微鏡観察した.両株とも培地中の表層付近で菌糸が巻くように伸長して菌糸塊を形成し,他交配型の菌株との接触によって子嚢殻まで成長する経過が観察された.この菌糸塊は交配時の雌器官であるascogonium あるいはその原基であると考えられた.菌糸塊形成頻度は単独培養と対峙培養で差異はなく,移植部を中心として菌叢周辺部へと広がるように形成された.暗黒下に比べ光照射下で形成頻度は高くなった.交配能が低い日本株(北1,P2)でも同様に蛍光タンパク質標識株を作出して観察したところ,上述の菌糸塊は全く形成しなかった.以上から,日本株の交配不全性はascogonium 形成能の欠損,すなわち雌性不稔に起因することが示唆された.
日本植物病理学会平成23年度大会(2011年3月、府中市で開催予定でしたが開催が中止されました。発表はなされたものとされています。)ポスター発表