Abstract
トマトは南米が原産とされ、現在も野生種が生息する。これらの一部がメキシコで栽培化され(移行期)、育種を経て流布し栽培トマトになったとされている。本研究では、トマト萎凋病菌F. oxysporum f. sp. lycopersici(FOL)の起源について、「トマトの栽培化・育種の過程で、定着性を有する非病原性F. oxysporumからFOLが出現した」との仮説を立てた。南米の野生種に加え、メキシコから移行期トマト、世界各国から栽培トマトを採集し、組織および根圏から分離した273株のいずれもトマトに病原性を示さないF. oxysporum菌株について、rDNA-IGS領域に基づく分子系統解析を行った。その結果、メキシコ産移行期トマトから分離された非病原性株(NPF)にFOLと極めて近縁なものが見出され、これらがFOLの祖先である可能性が示されると同時に、FOLがメキシコにおけるトマトの栽培化以降に出現したことが示唆された。また近年報告された、<.i>FOLの非病原力/病原力関連遺伝子領域(SIX1およびSIX4, van der Does 2008; Houterman 2008)の分布をPCRによって調査したところ、メキシコ産移行期トマト由来の株を含む全てのNPFは両遺伝子領域を保持していなかった。
*鳥取大農 Tottori Univ.
日本植物病理学会平成21年度大会(2009年3月、山形市)ポスター発表