Abstract
Fusarium oxysporumはアルコール発酵能を有し(Shigh ら,1991),その第一段階であるピルビン酸からアセトアルデヒドへの変換を司っているピルビン酸脱炭酸酵素(pyruvate decarboxylase)がキー酵素となっていると考えられる.Fusarium graminearumのゲノム情報を参考に,縮重PCR法によって,トマト萎凋病菌(F. oxysporum f. sp. lycopersici : FOL)からピルビン酸脱炭酸酵素をコードすると考えられる遺伝子(pdc1)をクローニングした.pdc1には3つのエクソンが存在し,570アミノ酸からなるタンパク質(PDC1)をコードしていた. pdc1の転写はジャガイモ煎汁液体培地等の振とう培養において確認された.FOLから二回相同性組換えによってpdc1破壊株を作出したところ,アセトアルデヒド,エタノール等の生産量の著しい低下とともに,嫌気的条件下での生育遅延が認められた.FOLは酸素分圧が低いと想定されている道管内で生育するため,嫌気呼吸能と病原性の関連に興味が持たれたが,pdc1破壊株のトマトに対する病原性検定では,病原性の低下は認められなかった.
*サントリー
日本植物病理学会平成19年度大会(2007年3月、宇都宮市)口頭発表