Abstract
イネいもち病菌の付着器形成時の差分cDNAライブラリーからRT-PCRによる発現特異性検定により,菌糸成長時と比較して付着器形成過程にある発芽管での発現が非常に高いクローンを複数見いだした(石井ら,2002).そのひとつクローン#B59の塩基配列解析から,本遺伝子産物が糖質加水分解酵素ファミリー61(GH61)に特徴的な領域と相同性を示した.GH61は糸状菌由来タンパク質で構成され,その一部はセルラーゼ活性が確認されている.イネいもち病菌ゲノムにはB59遺伝子産物以外にも16種類のGH61関連タンパク質の存在が示唆されており,前述のセルラーゼとより高い相同性を示すタンパク質も存在した.B59遺伝子は本菌ゲノム内に1コピーで存在したことから,2回相同組換えにより遺伝子破壊株を2株作出した.本遺伝子破壊株は見里-原培地上で親株と同様の菌糸成長を示し,カルボキシメチルセルロースやキシラン等の多糖を唯一の炭素源とした最小培地上での成長に差異は認められなかった.現在,本遺伝子破壊株が感染過程に異常がないか検定している.
*東京理科大理工
日本植物病理学会平成17年度大会(2005年3月31日、静岡市)口頭発表