Abstract
【目的】土壌に生息する糸状菌は多様で、種内にも植物病原性菌株や非病原性菌株が存在する。農耕地において、土壌菌中の病原菌を識別・検出することは病害予防のために重要である。本研究では、土壌抽出DNA(eDNA)を用い、病原菌を検出する方法を、トマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici : FOL)をモデルとして検討している。
【方法】Kawabe et al.(2004)はrDNA-IGS領域塩基配列に基づき日本産FOLのレースと系統が相関することを示した。またその結果に基づきHirano&Arie(2006)は、日本産FOLレース判別用特異プライマーセットを報告した。本研究では日本産FOL各レースの人工汚染土壌を作製し、そこから抽出したeDNAを用いて上述プライマーセットをDGGEと併用することで、大分類群から小分類群(レース)の識別の可否を検討した。
【結果】IGS領域増幅用プライマーによって、F. oxysporumと近縁種F. moniliformeが特異的に検出できた。Hirano & Arie(2006)の特異プライマーセットを用いたPCRでeDNAを鋳型として使用できる事がわかった。また、IGS領域増幅断片をDGGEによって分離すると、レース毎の塩基配列の差を反映した移動度の異なるバンドとして検出でき、この方法が日本産FOLレース判別に利用できることが示唆された。
以上から多様な土壌菌>F. oxysporumとその近縁種>トマト萎凋病菌>レース のように、eDNAを用いて、FOLを大分類群から小分類群へと段階的に篩い分けをして検出する方法が示された。
*埼玉農総研
**農環研
***現東北大院農
日本土壌微生物学会2008年度大会(2008年6月、静岡市)口頭発表