トマトの生育促進及び青枯病発病抑制効果をもつ植物随伴細菌

奈良吉主*・加藤孝太郎*・田渕浩康*・河原崎秀志*・有江 力寺岡 徹・木嶋利男*

Abstract

植物組織の内外に随伴して存在する微生物と植物間の相互作用の結果植物の生育促進や病害の発病抑制効果が現れることがある。そこで様々な植物の組織から随伴細菌を分離し,トマトに処理、生育促進および青枯病発病抑制効果を持つ菌株の探索を試みた。 胚軸切断捕捉法(木嶋ら、1992)などによって,トマトやイチゴなど複数種の植物から、組織内に存在していると思われる細菌、合計21株を分離した。分離細菌のトマトへの処理は、胚軸切断接種法(木嶋ら、1992)及び,播種直前に,表面殺菌をした種子を菌培養液に10分間浸漬する種子接種法によって行った。処理後のトマトは実験温室内で栽培し,主茎長を測定した。また、青枯病菌(Ralstonia solanacearum)を処理35~50日後に接種し、病害抑制効果を検定した。 イチゴから分離したKSR01株及び,ソバから分離したKSB07 株を種子接種法によって処理すると,トマトの主茎長が有意に長くなるなど生育が促進された。一方、KSR01株を胚軸切断接種法によって処理すると生育が抑制された。また、KSR01株の種子接種法による処理は青枯病の発病を抑制したが、胚軸切断接種法による処理では、発病抑制効果は認められなかった。KSR01株とKSB07 株をそれぞれシャーレ上で青枯病菌と対峙培養したところ、KSB07 株には阻止円が形成されたが,KSR01株では阻止円は確認されなかった。脂肪酸組成比及び,16S-rRNAの塩基配列解析から,KSR01株はHerbaspirillum sp.,KSB07 株はMicrobacterium sp.と同定された。今後は,KSR01株を中心に、植物組織内外における随伴細菌の動態と生育促進や病害発病抑制効果のメカニズムについて解析を進める予定である。

*微生物応用技術研究所


土壌微生物学会2007年度大会(2007年6月、柏市)口頭発表