Abstract
Gibberella sacchari(anamorph: Fusarium sacchari)は異なる交配型を持つ菌株間で交配し完全世代を形成するヘテロタリック(self-incompatible)な子のう菌である。FGSC 7610株(MAT1-2)と7611株(MAT1-1)を,それぞれプラスミドpMK412(egfp hph; Watanabe et al., 2007)とpAK2-HYG(dsred2 hph; 加藤, 2008)で形質転換した。得られた形質転換体FGSC 7610-gfp-hphとFGSC 7611-rfp-hphを交配して得られた子のう胞子を単胞子分離したところ,緑(egfp - ):赤(- dsred2):黄(egfp dsred2):白(- -)に分離した。緑,赤,黄の蛍光を示す単胞子分離株は理論上ハイグロマイシンB耐性遺伝子(hph)を保持するはずで,PCRによってhph遺伝子は確認できた。しかし,その中にハイグロマイシンB感受性を示す菌株が認められ,遺伝子型と表現型が矛盾した。これら矛盾した菌株のhph遺伝子の部分塩基配列(約900 bp)を解析したところ,C:Gの2.5〜11.6%がT:Aに置換していた。これはNeurospora crassaにおいて確認されているRIP(repeat-induced point mutation; Selker et al., 1987)に類似の現象と考えられた。
第10回糸状菌分子生物学コンファレンス(2010年11月18〜19日、東広島市)ポスター発表