Abstract
植物病原菌であるトマト萎凋病菌Fusarium oxysporum f. sp. lycopersiciはトマト品種に対して病原力を異にする3つの「レース」に分化している。トマト品種と植物病原菌Fusarium oxysporumは無性胞子として,小型分生子,大型分生子,厚膜胞子,さらに,振とう培養時にはbud cellを形成する.本菌はトマトなどの宿主に感染した後,導管流とともに胞子が移動することによって迅速に全身に転移する(松尾ら,1982)。そのため,F. oxysporumの胞子形成能が病原性に関与していることが想定された。abaAはAspergillus属等の胞子形成時に制御因子として働く遺伝子である(Mirabito et al., 1989)。今回,トマト萎凋病菌F. oxysporum f. sp. lycopersici (FOL)において,A. nidulans のabaAのホモログFoabaAを同定した。FoabaAはPSB培地上の振とう培養および静置培養のいずれの条件でも転写された。二回相同組換えによって得られたFOLのFoabaA破壊株では,PSA培地上での菌糸成長速度は親株と同等であった。FoabaA破壊株は厚膜胞子を親株と同等に形成したが,小型分生子,大型分生子,bud cellを形成しなかった。従って,FoabaAはF. oxysporumの小型分生子,大型分生子,bud cell形成に関与していることが判明した。
第9回糸状菌分子生物学コンファレンス(2009年11月18〜19日、文京区)ポスター発表