Abstract
イネ-いもち病菌の相互作用は、イネ品種-いもち病菌病原性レースの組合せにより決定される。このような相互作用の決定に関与する物質が、いもち病菌の胞子発芽液中に含まれることを見い出すと共に、マンノース結合型レクチンであるConcanavalin A (ConA) をリガンドとしたアフィニティーカラムクロマトグラフィーにより胞子発芽液を分画し、品種-レース特異性における機能解析をしたところ、イネ品種・愛知旭に対して親和性菌株 (北1、race007.0) 由来のConA結合型糖タンパク質画分は非親和性菌株 (TH68-140、race035.1) の侵入菌糸の伸展助長作用を示した。同様の作用が、イネ品種・関東51号に対して親和性菌株由来のConA結合型糖タンパク質画分でも観察された。またConAと非常に類似した糖結合特異性を持ち、イネの病害抵抗性発現機構に関与していると推定されているマンノース結合型イネレクチン (MRL) (Teraoka、1990) と相互作用を示す物質が同画分に存在することが、抗MRL抗体を用いた免疫反応により示唆された。また、同画分のprotease処理、脱糖鎖処理により活性が喪失することから、おそらくイネいもち病菌はイネ-いもち病菌相互作用の場においてConA結合型糖タンパク質を分泌し、同物質は感染を助長するようなサプレッサー様機能を持つことが示唆された。
第8回糸状菌分子生物学コンファレンス(2008年11月18日、金沢市)ポスター発表