Abstract
ツボカビ門に属するOlpidium viciaeは、Kusano(1912)によって見出された絶対寄生性の土壌病原菌で、ソラマメやエンドウなどのマメ科植物に特異的に寄生し、火ぶくれ病を引き起こす。本邦では房総半島での発生が報告されているが、近年はその発生が減少している。そこで、O. viciaeの系統学的位置を分子生物学的に解析することを計画した。そのために、2008年5月、房総半島で火ぶくれ病に罹病したソラマメ組織を採集、この感染葉組織からトータルDNAを抽出した。このDNAを鋳型に18S rDNAの部分断片をPCRによって増幅した。しかし、用いたプライマーセット(FF390, 5’-CGATAACGAACGAGACCT-3’+ FR1-GC, 5’-CCCCCGCCGCGCGCGGCGGGCGGGGCGGGGGCACGGGCCGAICCATTCAATCGGTAIT-3’)では、ソラマメの同領域も増幅するため、O. viciaeの断片と区別できない。健全ソラマメ葉と罹病ソラマメ葉由来のPCR増幅断片を変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)でバンドパターンを比較し、O. viciae感染葉からのみ検出される断片をシークエンシングした。得られた塩基配列と同属のO. brassicaeや、他属のツボカビであるSynchytrium spp.などを併せて分子系統解析を行ったところ、O. viciae感染葉からのみ検出された断片の配列がO. brassicaeのものと類似しており、得られた塩基配列がO. viciaeの18S rDNAの部分配列であることが示唆された。
*東京大学大学院
第8回糸状菌分子生物学コンファレンス(2008年11月18日、金沢市)ポスター発表