Abstract
Fusarium oxysporumはアルコール発酵能を有する (Shigh et al., 1991). アルコール発酵の初期反応であるピルビン酸からアセトアルデヒドへの変換はピルビン酸脱炭酸酵素が司っている. F. graminearumのゲノム情報を参考に, 縮重PCR法によって, トマト萎凋病菌 (F. oxysporum f. sp. lycopersici: FOL) からピルビン酸脱炭酸酵素をコードすると考えられる遺伝子(pdc1)をクローニングした (平成18年本学会で発表). FOL NBRC 6531株を用いてpdc1破壊株を作出した. pdc1破壊株は好気条件下での菌糸生育、胞子形成能に変化はみられなかったが, 嫌気条件 (アネロパックケンキ使用, 酸素濃度約0%) 下での生育は遅延した. また, 液体振盪培養時のアセトアルデヒド, エタノール等の生産量の著しい低下がみられた. FOLは酸素分圧が低いと想定される植物の道管内で生育するため, 嫌気条件での生育と病原性の関連性に興味が持たれた. そこで, pdc1破壊株のトマトに対する病原性検定を行ったところ, 病原性の低下やレースの変化, 植物組織内進展速度に変化は認められなかった. 逆に, FOLのPDC1過剰発現による表現型の変化をみるためにベクターを構築している.
*サントリー
第7回糸状菌分子生物学コンファレンス(2007年11月15日、東京都文京区)ポスター発表