Abstract
交配不全性子のう菌Fusarium oxysporumは、土壌伝染性の植物病原菌で、植物根部から侵入し、導管内を蔓延し、全身を萎凋・枯死させる。本菌は、酸素分圧が低いと想定される植物の導管内で生育することから、導管内では嫌気呼吸を行うことが推察される。また、本菌は嫌気呼吸の1つであるアルコール発酵能を持つことも知られている。そこで、本研究ではアルコール発酵と病原性との関連性について調査するため、好気呼吸とアルコール発酵の分岐点付近で機能するピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)に着目した。F. oxysporumではPDC遺伝子は未同定であったため、近縁種であるF. graminearumのデータベース上の、他菌ピルビン酸デカルボキシラーゼと相同性の高い機能未知タンパク質(#XM_390010.1)をコードする遺伝子情報を基に、縮重PCR、TAIL-PCRによって、F. oxysporumから3554bpの断片をクローニングした。このDNA断片中には、3つのエクソンからなる推定ORF(1710 bp)が存在し、PDCと想定される570アミノ酸からなるタンパク質をコードしていると考えられた。この遺伝子をpdc1とした。PDC1は、アミノ酸配列でF. graminearumの推定タンパク質と96.1%、Asperugillus fumigatusのPDC(#XM_74419.1)と63.5%、A. oryzaeのPDC(#AF098293.1)と62%、Saccharomyces cerevisiaeのPDC1(#NC_001144.4)と47%の相同性を示した。また、PDCに高く保存されるアミノ酸モチーフ(-GDG-から-NN-)が存在した(aa. 448-476)。ゲノミックサザン解析の結果、pdc1はF. oxysporumゲノム上に1コピー存在した。
第6回糸状菌分子生物学コンファレンス(2006年11月12日、堺市)ポスター発表