Abstract
トマト原産地近傍と推定されているチリ共和国北部地域から、 2002 年 12 月および 2004年 3 月にトマト属野生種 (Lycopersicon pervanum, L. chilens ) および栽培種 ( L. esculentum ) を採集した。これら植物体の果実内部、果実外部、茎外部、茎内部、葉、根から計 562 株の糸状菌を分離し、同定を行ったところ、Alternalia 属菌、 Aspergillus 属菌、 Cladosporium 属菌、 Fusarium 属菌、 Geotrichum 属菌、 Mucor 属菌、Rhizopus 属菌、 Papulaspora 属菌、Penicillium 属菌、 Phoma 属菌、 Trichoderma 属菌、 Ulocladium 属菌が見出された。 Fusarium 属菌については種を同定し、 F. oxysporum 39株のトマト萎凋病菌レース検定用トマト品種に対する病原性を調査したところ、いずれも病原性を示さず、非病原性であると考えられた。これらの菌株の rDNA IGS 領域の塩基配列を決定し、すでに登録済みの F. oxysporum 各分化型株の塩基配列情報 ( 川部ら, 2005 ) と比較し、分子系統解析を行った。その結果、トマト属野生種および栽培種由来の F. oxysporum菌株は概ねF. oxysporum f. sp. lycopersici ( FOL ) 株によって構成されるクラスターの近傍に位置し、他分化型菌株よりも FOL に近縁であることが示唆された。また 2005 年 7 月に、メキシコで、野生種から栽培種への移行期にあったと想定されているトマト ( L. esculentum var. cerasiforme ) を採集し、同様に F. oxysporum を分離し、現在これらの菌株についてもあわせて系統解析を行っている。
*現食品分析センター
**現ワシントン州大
***鳥取大農
第5回糸状菌分子生物学コンファレンス(2005年11月8日、文京区)ポスター発表