イネいもち病菌の葉鞘細胞内での感染動態と遺伝子発現
Dynamic behavior of rice blast fungus expressing EGFP in rice sheath cells and associated genes expression
三田地貴史齋藤憲一郎金森正樹有江 力寺岡 徹
Takashi Mitachi, Ken-ichiro Saitoh, Masaki Kanamori, Tsutomu Arie and Tohru Teraoka

Abstract

イネいもち病菌の胞子発芽,付着器形成から宿主イネへの侵入に至る感染初期過程については多くの知見が得られているが,宿主侵入後の動態については未詳の部分が多い. EGFP常発現株を用いてイネ葉鞘細胞への侵入,侵入菌糸の伸展,蔓延の挙動を共焦点顕微鏡下で観察したところ,興味深い挙動が観察された. 侵入菌糸は隣接細胞への侵入時に細胞壁付近でいったん膨潤後,くびれ細まった後,細胞壁を貫入し,その部位ではEGFPの蛍光が見られないか微弱であった. その後,侵入菌糸は先端が丸みを帯びた吸器様の球状構造をとった. 経時的に観察すると,接種約96時間後までの挙動から侵入菌糸の伸展は二つの様式に大別できた. すなわち侵入開始直後から観察される伸展が遅く太い,分枝を数多くもつ菌糸と,96時間後に見られたほとんど分枝を伴わず細く伸展が速い菌糸である. 感染初期過程に関わるFMI1(B19)遺伝子1)のORF上流約2.1 kbの断片の下流にEGFPを連結し,その導入個体を葉鞘接種して観察したところ,接種48時間後の前者の侵入菌糸には蛍光が認められたものの,90時間後の侵入菌糸では蛍光が消失していた. これらのことは本菌の侵入菌糸の動態がイネ組織内で変化し,それと符号して発現する遺伝子も切り替わることを示唆していた。 1)Saitoh et al. (2005) 23rd Fungal Genetics Conference program book p137


第5回糸状菌分子生物学コンファレンス(2005年11月8日、文京区)ポスター発表