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2020年春近況 (間違いを訂正しました。ご指摘に感謝申し上げます@2020.5.20)

  こういった記事を、研究室HPに掲載することはいかがかと思うが、未曽有騒動の中での非日常を書き留めておきたいと思う。

 東京でも大学でも、きっと近日中には自粛とは反対の動きが始まるだろうが、桜が散り、初夏を迎えても「日常の風景」が失われたままである。渋谷の駅前も大学のキャンパスも若者でごった返しているのが正しい日常である。こうした事態なので仕方がないことだが、物事を判断・実行する人に対して、批評家の数が多すぎるのも異常である。皆で対応しなければいけない騒動であることは理解できるが、この騒動は、通り過ぎるのをじっと待っていればよい嵐とか猛暑とか寒波のように刹那的なものではなく、さまざまな古くから継承してきた秩序とコミュニティーをわずかの時間で着実に破壊しながら通り過ぎているため、今後予想される後遺症に社会全体として対応を迫られることになる(新たな仕組みを創り出していくといったほうが適切かもしれない)。

 大学というコミュニティーでは、活動を停止することによる(経済的な)マイナス効果は、企業活動に比して質・サイズともに違うため、トップの判断もどうしても安全側に振れる。これはやむをえないことで、入試業務と同じで「なんもなくて当たり前、なんかあったら袋叩き」という状況で積極的な判断は難しい。しかもサービスを受ける側の学生さん、保護者の皆様の判断も大きく分かれることが想定され、どんなチョイスを取ったとしても全員に納得していただけることは難しいと考えられる。好きな人だけ行けばいい水族館とか遊園地とは根本的に違う。大学でも月末に向けて日常戻るためのシナリオが示されて、前述の通り賛否は分かれ混乱が予想されるが、前向きなプロセスが進み、未来にわずかでも光明が差すという意味で喜ばしいことである(よくわからない、目に見えない、先が見えないというのが今回の騒動の難しさなので)。

 各種学会も講演会も様々な情報交換会(?)(OB会を含む)も中止や延期になり、随分とフリーな時間ができたわけで、3月の終わり頃には、あれもやろうこれもやろうと意欲と構想だけは立派だったが、結局のところ、進捗は芳しくないばかりか、「ちょっと先のこと(ポストコロナ)」に思いを馳せる余裕もなく、「目の前のこと」に追われてしまった。多くの先生と呼ばれている人と共通だと思うが、Classroomでの授業コンテンツ作りとMeetZOOMによるWEB会議に忙殺される日々を過ごしてきた。

 WEBを介した打ち合わせ・会議に関しては、本来進むべき道であって、これまで遅々と進まなかったのが、これを機に一気に進んだ感がある(インフラもテクノロジーはあったが、多くの人が使うのが面倒と二の足を踏んだ状態だったと考えられる。もちろん私も)。いろいろと不都合があるのかもしれないが、少なくともぬいぐるみ系(いるだけでよい)会議において移動の手間が省けることは歓迎すべきことなのだろう。その会議の「本来持つ意味」が、あるグループを対象とした「一斉メールの意味」と同じように多様化していくことが想定される。研究室の打ち合わせ会、勉強会などには個人的には適したツールであると感じている(こればかりは学生諸氏からの感想等を聞いてからでないと断言できないが)

 テレワークもたいへん結構だと思うが、テレワークになじまない職種は、きっと数多あるはずだし、一部のホワイトカラーに限定的なことなので「働き方改革」といっしょに議論すべきではない。同時に本来の意味の労働に適したスペース・環境を自宅に有している(特に共働きの場合)人が、どれくらいの割合でいるのだろうか?ということは大いに気になる。首都圏のような一般的に矮小な住宅の中で、普通は「家にいない」旦那さんのために、個室または相応のスペースを用意はできないだろう。したがって今回のように急に「明日からテレワーク」と言われても対応は難しく、相当の準備と投資が必要なのだろう(そもそも東京に住んでいる必要はない)。平常時ならともかく、元気一杯な小さなお子様たちが在宅の若い人たちにとっては、「仕事」は相当きついようにも感じる。私の場合も種々の理由でテレワークは難しく、どうしても大学で作業ということになる。

 これだけ人が移動すること、集まることが、「悪」と見なされる中、世間的にも個人的にも見直されたのが自動車での通勤である。都市部(多摩地区も一応含めて)では車は不要という風潮が、特に若い世代ほど優勢で、自分自身も「車だと急な情報交換会に対応できない」というスタンスだったが、今回のような状況だと、車通勤は「快適なスペース」を作ってくれるありがたいものになった。今のご時勢、電車の席が1つ空いていたとしても、そこに座るためにはいろんな駆け引きが必要なほど、人と人との接近が大それたことになっているので、そのような気を使う必要のない車通勤は、とても合理的に感じる。それにもまして、車はその限られたスペースを保ったまま、いろんなところに連れて行ってくれるというツール(当たり前・・・)で、その魅力が(都市部においても)再評価されてもいいと思う。「車が楽だし、楽しい」という感覚に随分と久し振りに浸っている(今は迂闊に神奈川県や山梨県に行ったりできないが)。もう少し若ければ、ハイスペックな自転車でも購入し通勤したり遠出をしてもいいのだが・・・。これは考え中です。

 この騒動の後、皆が知恵を出し合い、ビジネスでも、大学のような教育の現場でも、学会のようなマニアのコミュニティーでも、新しくてより良いシステムが再構築されていくだろう。随分前の雑文に書いたが、世の中というのは、転がる石、流れる水と同じで、平穏に時が流れると低い(悪い)ほうに転がっていくが、大きな負のイベントから立ち直るときに、ブラッシュアップされ、きっといい方向に変わっていくというのが持論である(楽観論)。

 冒頭で「コミュニティーが破壊」と書いたが、本当に必要なものが贅肉を削ぎ落として再構築されていくだろう(やはり楽観論)。しばらくは「膝を突き合わせて議論」とか、「口角泡を飛ばして口論」などの言い回しは死語になるだろうが・・。エビデンスも何もない希望的観測だが、個人的には人と人が会うことが貴重であり、面と向かうことの意味やありがたみをよく噛みしめて生きていくことになろう。少なくとも「密」とか「三密」とかいう得体の知れない薄気味悪い言葉は、これからはあまり使いたくもないし、聞きたくもないというのがやはり個人的な感想です。あと、人と会わないという前提があると、部屋は大爆発、身なりは適当、髭は剃らない、とあまり健康的な生活はできないということは、今回のことでよくわかった。

 

おまけ1 3月エンドから今日までの季節の移ろいを

2020.3.13 辛夷@BASE中庭

2020.3.18 染井吉野蕾@BASE裏

 2020.3.24 夕焼け@欅並木

 2020.4.2 染井吉野@BASE裏

 2020.4.3 枝垂桜@生協前

2020.4.8 躑躅@池の周り

 2020.4.10 八重桜@管理棟横

 2020.4.14 グラウンド方面

 2020.4.24 イチゴの花@荻野研

 2020.5.5 綿花の芽@荻野研

 2020.5.18 紫陽花@BASE前

 2020.5.19 欅並木

おまけ2 なんの脈絡もなく因数分解系の問題を。

(2020.5.19)