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時間に対する感覚
 
 人によって捉え方は随分と違うと思うが、「日本人は時間を厳守する(punctualな)民族」と考えるのが一般的である。新幹線に乗れば、(関ヶ原で雪が降らない限り)かなりの確率で時間通りに目的地へと連れていってくれる。組織、個人ともに「時間は守るべきもの」という認識がベースになってさまざまな活動がなされているように思う。先日、日本をよく知るある外国人に「日本人は時間にルーズだ」と指摘された。彼の主張は以下の通りでなるほどと思わざるを得ない。

「来る時間は正確だが、帰る時間はバラバラで決まっていない」

私たち昭和な人間に共通することかもしれないが、確かに帰る時間は遅いほどよい、と考えている組織・個人(大学の先生)が多いような気がしないでもない(完全に社会の流れに逆行している・・)。

 当然日本人という大きな括りから離れると、時間とか待ち合わせに関する感覚には個人差がある。現在と違って、80~90年代前半の待ち合わせでは、この個人差により悲惨な状況が産まれることがあった。例えば「自分は2時間まで待つ」とか「1時間で帰る」とか様々なスタンダードを持っているが(おそらくここは今の人たちも同じ)、そのため「30分しか待たない人」は、30分以上遅刻しそうになると、待ち合わせに行かないという行動を取る場合があった。その待ち合わせの相手が「2時間まで待つ人」の場合は、決して来ない人を2時間まで待つことになる(実体験)。
 今はほぼ全員がスマホとかを携帯しているので、待ち合わせ時間に遅れそうになったりすると、それを「待っている人」に伝えることが可能だが、その時代はそういうわけにはいかなかった。唯一のツールは電話だが、在宅でない場合は無力で、多くの駅に設置されていた黒板状の掲示板が活躍することになった。待ち合わせがうまくいかないとき、「○○へ、先に□□に行ってます。」とか書いてなんとかコミュニケーションをとろうとしたものだ。現在からみると当時は悲惨だったな、ということになるかもしれないが、それはそれで風情があるもので、「JR東海のクリスマスのときCM」(山下達郎さんの「クリスマスイブ」がバックに流れ、遠距離恋愛のカップルが再会するというストーリー)のような心暖まるsituationは、現在では成立しないと思われる。

 さて話は変わって何かと話題の「裁量労働制」だが、国立大学が法人化したときから、私たちは公務員ではなくなり、この制度の下で働いて(?)いる(労働基準法の管理下で)。個人的には全く不満はないが、それには3つの理由がある。
1)労働時間を管理する「上司」が実質いない(本当の意味で、個人の裁量で労働時間を選べる)
2)労働時間と成果が直接関係しない(というより成果が何かもぼやけている。労働時間と成果に強い相関があり、成果を上から求められるとどうしても長時間労働となる)
3)広義の労働集約型の仕事ではない(誰かが仕事をしていると帰りにくいということがない)


この3点が保障されていない限り、大学の教員であっても裁量労働制の適用には慎重になるべきだろう。

 上記の3点が保障されたとしても、制度上はカスタマーである学生さんに「もっと働け」と言われると、もっと働かないといけないような気がしますが・・・。幸いにして・・・。逆にボーとしながら、考え事などしているだけで、残業代が発生したりすると、後ろめたい気持ちになり精神衛生上好ましくないだろう(NHKの人に叱られるかもしれないが、ボーとすることが必要なので)。

 今回の「働き方改革」で裁量労働の大学の先生方の「労働時間管理」も必要という指導に対して、建前上かもしれないが「学会活動はボランティア」、「研究は趣味」みたいな説明(逃げ道)があるらしいが、そのようにはっきり言われると「釈然としないもの」を若干感じますが・・・。
 学生さんは労働者ではないので裁量労働もなにもないのだが、自らの裁量で、さまざまなタイムスパンの「目標」をよく考えて設定し、それに向けての「スケジュール管理」をするというトレーニングは、しておいたほうが、将来に向けていいのかな、とは思います(荻野研限定)。




おまけ(昔の「古畑任三郎」(笑うカンガルー、1995年)というドラマで犯人で数学者の陣内孝則さんが、田村正和さんに課したゲームの改題・・・。陣内さんが数学者に見えないという声も少しある)

問)好きな数字を決めて、お互いに1から数えるゲームとする。最後に最初に決めて数字を言った方が負けであり、一度に言える数字は3つまでとする。ドラマで出てきた16の場合は先手必勝で、先手となった場合、最初にどのような数字を言えばよいか?

解答例)先手は「1, 2, 3」と答えればよい。ドラマではこのあと、「4, 5, 6」(田村さん)→「7」(陣内さん)→「8, 9, 10」(田村さん)→「11」(陣内さん)→「12」(田村さん)→「13, 14, 15」(田村さん)→「16・・・」(田村さん)となり、陣内さんの勝ちとなった(最初の答で田村さんがどのような答え方をしたとしても、陣内さんは7を言える)。

最後に相手に「16」(4の倍数)を言わせるためには自分は「4で割ったときの余りが3)になるように答えればよい。最初に3を答えておけば、その後7, 11, 15は必ず答えることができます。

最初に設定した数字が15の場合(4で割った余りが3)では、余りが2である数字を言えばよいので、先手必勝で2, 6, 10, 14を答えていけばよい。

14の場合は余りが2なので、余りが1になる数字1, 5, 9, 13を言えば同じく先手必勝である。


13の場合は4の倍数を言わないといけないので、ここは後手が必勝となる(先手がどういう答え方をしても、「4」と答えられる)。

(2019.3.17)