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多機能多相系材料へのモチベーション   

                
 2000年に研究室を主宰することになり、何を「売り」にした研究室にしていこうか考えたとき、合成、評価のバランスを取りつつ、学生さんには、一貫したものづくり感を味わってもらうことを最優先と考えました(自分自身がそんなところに達成感を感じていたので)。これが売りという材料を何んとか作って、その部分については、分子構造から高次構造まで構造解析をきちっとやっていこうと決意しました。助手時代、佐藤壽彌先生の御指導の下で、電荷輸送性材料、フォトリフラクティブ材料に関しての研究をやり始めていたところだったのですが、これらの材料を対象にして何らかの形で研究室としての特徴を出していこうとまずは考えました(研究対象を新たに開拓することも必要とは思ってはいましたが、まずは取組やすそうなところから・・)。そこで始めようと思ったのが、ブロック共重合体を用いた多機能多相系の高分子半導体材料でした。1995年にカーネギーメロン大学のMatyjaszewski教授や京都大学の澤本光男先生らのグループが独立に発表した原子移動型ラジカル重合に関しての研究にも後押しされました(これまでのアニオン重合、グループトランスファー重合などのリビング重合系では、なかなか重合が難しそうなモノマーでも重合できそうと考えたわけです)。このとき、モチベーションになった研究が下の2つです。

一番目は、p型とn型のポリマーブレンド系の太陽電池の論文で、エビデンスはないのですが相互連結構造が重要だみたいなことが書いてあって、その後のバルクヘテロ構造の成功を予想するものでした。難しいかとは思いましたが、pとnのブロック共重合体ができたら、相分離の構造制御という意味で面白いなと思いました。

二番目は当時、電子写真の分野で当たり前だった分子分散系の論文なのですが、ホストとしてSBSのブロック共重合体を使っているところに特徴があって、ミクロ相分離したスチレン相に電荷輸送分子が選択的に偏在することで正孔移動度が2ケタ向上するという論文です。電荷輸送のパスをいかにして構築するかという点で、個人的にはたいへん興味深いものでした。


月日は流れましたが、未だにブロック共重合体系の高分子半導体をメインテーマとして捉えています。最近やっとのことで、当初思い描いていた高次構造と物性との関連を調べる気になる材料系に巡り合えた予感がしています。もう少し、学生さんといっしょに頑張って行こうかなと思っています(2018.5.6)