農工大の樹  その86

   
コハウチワカエデ
(カエデ科カエデ属の種、学名:Acer sieboldianum Miq. ,別名:イタヤメイゲツ)
 この種は樹高10-15m、直径30ー60cmにもなる落葉広葉高木で、北海道、本州、四国、九州の山地に分布する日本固有種です。ブナとの相性が良く、海抜1,000m以上のブナ林の中によく見られます。秋には山吹色になるブナ林を、ツタウルシやヤマウルシと一緒に真っ赤な紅葉で彩りを添えます。低地には分布しませんが、紅葉が美しいことから庭木として植えられることも多いようです。この種の仲間には鳥の羽で作った天狗の「羽団扇」に似た形をした葉を持つハウチワカエデがあります。この種の名前は葉がハウチワカエデに似ているが、それよりも小形であることから名付けられたものです。また、イタヤメイゲツとは、メイゲツカエデは秋の名月の光でも美しく紅葉が見られるカエデと言う意味ですが、そのような特徴を持ちながらも形がイタヤカエデにも似ていることから呼ばれるようになったようです。この種の材は家具や机などの器具材としての利用がほとんどのようですが、銃台や刀鞘などにも利用されました。
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司

一覧へ戻る