農工大の樹  その79

  
ハナズオウ
(マメ科ハナズオウ属の種、学名:Cercis chinensis Bunge , 漢字:紫荊)
  
 この種は庭でよく見かける高さ2-4mの落葉低木です。中国原産で日本には江戸時代の1695年に入った記録があります。原産地の中国では15mにもなる大木があるそうです。この種は春、写真のように赤紫色の花が葉が出る前の幹にびっしりと束状につきます。花は枝ではなく幹に直接咲くので幹生花とよばれ、よくみると、それは昨年またはそれ以前に葉がついていた跡に咲いています。花の付き方はカカオ、パパイアなど、熱帯地方の樹木と共通する特徴です。葉は円く、大きさ6-10cmで、基部が心形、先端が短く鋭く尖っています。花が終わると種子は他のマメ科の植物と同じように薄い鞘の中にできます。この段階で、この低木がマメ科であることがわかります。この種の名前は、花の色がスオウと言う木で染めた蘇芳(すおう)色に似ていることに由来します。この種の仲間は世界に6種が知られています。ヨーロッパに生育するセイヨウハナズオウは、キリストを裏切った弟子のユダがこの木で首をくくって自殺したと伝えられることから、ジューダス・ツリーと呼ばれています。このセイヨウハナズオウとアメリカハナズオウは共に大正末期に来日しました。この種は低木であることから、材の利用はありませんが、樹皮が漢方薬「紫荊」として、解毒やはれ物の治療に使わるそうです。
      
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司

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