農工大の樹  その78

  
スモモ
(バラ科バラ属の種、学名:Prunus salicina Lindley, 漢名:李、別名:ハタンキョウ、トガリスモモ)

 この種は樹高8mくらいになる落葉広葉樹で、古い時代に中国から渡来したと言われています。早春に木全体が真っ白になるくらいに多くの花をつけ、春の訪れを真っ先に知らせてくれる木でもあります。この種は全体的に同じ中国原産のモモと似ていますが、葉がモモよりも幅広く波打っていること、果実の色は赤紫から黄色で、毛が無いことなどで容易に区別できます。一般にプラムと呼ばれるこの仲間は、中国産のこの種とヨーロッパ原産のミノバランスモモ、セイヨウスモモのグループに大きく分けられますが、共に園芸起源であるために多くの品種があります。日本語のスモモは実に酸味が強いことに由来した「酢桃」の意味ですが、完熟するとやわらかく甘くなります。この種を見ると、熟す前の実が枝に目立つようになる田植えが終わった頃、その実を酸っぱさに身を震わせながらかじった子供の頃のことを思い出します。
 
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司

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