農工大の樹  その75

〈上:花と実〉  〈下:若葉〉
   
シロダモ
(クスノキ科シロダモ属の種、学名:Neolitsea sericea Koidz.、別名:シロタブ)

 この種は樹高15m,直径50cmにもなる常緑広葉高木です。その分布は暖温帯域で、本州の宮城県以南、四国、九州、沖縄、韓国南部,済州島、台湾、中国南部に広く分布しています。葉は革質で堅く、表面は緑色、裏面は白色で3本の主脈が目立ちます。また、若葉は成葉とは全く異なり、銀灰褐色で長い毛を密生します。雌雄異株で、雌花は9月頃に黄色で開花し、1年をかけて成長、翌年の10月に赤熟した液果をつくります。開花時にも液果が着いているので、花と果実が同時に見られるという特徴があります。鳥にとって食物の少なくなる冬期に赤い実を付けることから、ヒヨドリ、ツグミなどの中型の鳥の餌となり、種子はそれらの糞に混じって各地に散布されます。そのため、遷移の段階では、比較的早くに生育を開始する種でもあります。学名のうち、種小名のsericeaは「絹毛の」という意味で、若葉の時の特徴を表したもの、シロダモは「白ダモ」の意味で、葉裏が白いことに由来しています。この種は、用材としての利用はありませんが、材が白く細工しやすいために、小細工物の材料に使われました。また、昔は種子から油を絞って燈油にしたり、蝋の原料としても使われました。
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司

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